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42 - 第42話 聖のカミングアウト

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2025年02月13日

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◻︎聖の告白




「あ、あのさ…それで、俺も話したいことがあるんだけど」


聖が、話しにくいことを話したそうにしている。

なんかややこしいけど。


「なぁに、珍しいね。大事なこと?」

「ん、うん…まぁ、大事…かな?」


なんとなく、歯切れが悪い。


「え?聖、話すのか?」

「うん、今じゃないと言えない気がする」


なんだかいつもと違う聖。


「おいおい、一体なんの話をしようとしてるんだ?」


夫も気になるようだ。


「はい、あんたの父母はちゃんと話を聞く準備ができました。だから、ほら、話して」


私と夫はきちんと息子の正面に座った。


「あの、俺も、自分探しに行きたい」

「は?」

「ん?え?えーっ!あんた内定出てるんでしょ?」

「うん、でも、なんとなく違う気がして」

「内定、断るとか?」

「…悩んでる」


ふぅーと夫婦でため息が出る。


「聖は、柚月君が自分探しをしたいという話を、私らに聞いて欲しかったんでしょ?それがなんで聖もそうなるの?」

「なんていえばいいか…柚月の話を聞いてからの父さんと母さんの反応を見てたというか。そしたら、特に反対もしなかったし」


「それって、聖はズルいよ。そうならそうと最初から言いなよ」

「そうなんだけど…」

「あ、あの、それは俺のせいなんです」


柚月が割って入る。


「俺が、聖のことを好きだって言ったから」


_____ん?


その場が一瞬で、シーンとした。


「やっぱりおかしいですよね?俺は一応男だし、聖も男だし。自分でもわからないんですよ、なんでこんな気持ちになったのか…。それで自分で自分のことをわかるために自分探しをしようかな?なんて考えて、その話を聖にしたら、なんか一緒に…その…」


「聖も柚月君のことを…?」


“好きなの?”とはストレートに聞けない、人間性ができてない私。


「一緒にいて楽しいし、女の子よりずっと気楽でいい。でも、それ以上はよくわからないんだ…」


ヘラヘラと言う聖に、少し苛立った。


「あんたは昔っからそう!なんですぐ周りに流されるのかな?そして、よくわからないのに内定も断ろうとしてるし」

「だって、それはなんか違うって思いながら働いても、やる気が出ないと思うし」


「じゃあ、なに?あんたは、自分にピッタリの仕事じゃないとやらないの?それって、どんな仕事?いつみつかるの?」

「それは…」


「仕事ってね、自分のやりたいことをやれてる人って、ほんのひと握りだよ。ちょっとくらい違うなって思っても、なんとかやっていこうとしてみんな頑張ってるんだよ。みんながみんな、やりたい仕事に就けるわけがない。内定をもらった会社も、自分で探した会社でしょ?企業側もね、新入社員を入れるのに一人当たりどれくらいの経費がかかるか、知ってる?50万かかることもあるって言われてるんだよ。それを簡単に断るとか言って」


「そうなの?!」


夫が驚いて答える。


「え?パパは知らないの?まぁ、いいけど。とにかく内定を断るのかどうかはよく考えなさい。それから、大学を卒業したら自分で生活しなさい。社会に出て、いろんな波に揉まれてたらそのうち、自分ってものが見えてくるから。そうしていれば柚月君とのことも見えてくると思うし」


話しながら、考えていた。


_____まさか息子からのこんなカミングアウトがあるなんて…実感はないけど










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