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~フラム宅~
フラムの実家はこのリーヨンにあり、子供の頃からこの街に両親とともに過ごしていた。
意識を失い昏睡するエリアを前にフラムは俯き悩んでいた。
あのサンドルとの戦いの後、エリアはフラムの実家が引き取り、フラムとフラムの両親で介護をしていた。
なぜならエリアは元々孤児であり、この街の施設で育っていたため、両親がいなかったのであった。
「はぁ俺はどうやって、エリアを救えばいいんだ!?」
「このまま、弱っていく彼女を俺は何もせずただ見ていることしかできないのか―――」
“一年以内に俺様を殺せばこの娘は生きることができる”
サンドルのこの言葉がフラムに重くのしかかる。
ここ数日レッドカーネーションの仲間の葬式も行われていたこともあり、まともな食事をフラムは取っていなかった。
「調子に乗っていた、自分の力を過信してしまった―――」
「自分はAランク冒険者だからどんな魔物でも俺なら勝てるそう高を括っていた!!」
「でもそれは違っていた。」
「奴の前では俺の力はまるで赤子の手を捻るように簡単に蹂躙された!」
「奴は俺の想像以上の化け物だったっ!!」
「そのせいで皆を死なせてしまった―――」
「二コラ、ジャン、セヴラン、エマーーー」
「お前たちにはどれだけ償えばいいんだ!?」
「リーダーである俺だけ生き残ったのは何故だッ!!」
「ごめん、ごめんよみんな!」
「俺だけ生き残ってしまって、でも絶対に仇を取るから、アイツだけは俺が絶対に倒すからそれまで待っていてくれ!」
再び、あの時のことを思い出し、フラムはポロポロと涙が頬を伝っていた。
「エリアだけは!!エリアだけは助けたい!!」
「もうこれ以上仲間が死んでいくのは見たくない!」
フラムはあれから何度寝ても、皆の死んだときの光景が夢に出てきて、その度に飛び起きてしまうようになっていた。
エリアを救おうにも一年以内にサンドルを倒している自分が全く一欠片も想像できない。
力も魔力も経験も向こうが圧倒的に強い。
それに奴は殺したとしてもその瞬間今まで吸収した生命エネルギーを使って蘇生してくる。
それも奴の言葉を信じるなら”427”回もである。
「俺は一体どうしたらいい・・・?」
「一年以内にサンドルを倒せばいいんですよ!」
誰かの声が聞こえたのでその方向を振り返ると、自宅の扉を開ける者がいた。
そこにいたのは、冒険者皆が絶望する中でただ一人サンドルに立ち向かい続けた少年”天童 進”であった。
「ススム君!?もう起きていても大丈夫なのか?」
「ええ、おかげさまで、この街まで運んできてくださりありがとうございます。」
眠っていた進を送ってくれたフラムさんにまずは感謝の言葉を贈る。
「さっきの話なんだが、サンドルを一年以内に倒さないとエリアさんは起きないんですよね?」
「マリーからその辺の話を聞きました。」
「そうか、聞いたのか―――」
「君もあのサンドルと戦ったんだから分かるだろ?」
「奴の強さは規格外だ!」
「まるで一年以内に倒せるビジョンが見えないんだ!」
「いや、多分一生かかっても倒せないんじゃないかとすら思えてくる!!」
フラムさんなりにこの数日間悩んでいたんだな―――
オレはフラムさんにここに来るまでにマリーと決めていたある提案をした。
「フラムさん、オレたちの仲間に、パーティに入りませんか?」
「ススム君には悪いが俺は、レッドカーネーションのリーダーだ―――」
「それは出来ない。」
フラムは進の申し出に即答で断った。
「でももうレッドカーネーションはフラムさんとエリアさんしかいないのでしょう?」
この発言はフラムさんを怒らせてしまうかもしれないけれど、そこを理解してもらわないとフラムさんは一生サンドルを倒すことはできないだろう。
「ススム君、流石の俺も怒るよ?」
「このレッドカーネーションは、皆の、二コラ、ジャン、セヴラン、エマの生きた証―――」
「そのパーティを解散するってことは絶対にできない。」
やっぱりそう云うと思った。
「やっぱりそうですよね、ただ別にオレはレッドカーネーションを解散してほしいなんて言っていないです。」
「そうですね―――」
「一時的にオレたちのパーティに加入するってことではダメですか?」
「一年!サンドルを倒すまででいいので。」
「それ以降はまたフラムさんがレッドカーネーションの活動を再開させればいい!」
「なぜそんなことをするんだ?」
「理由はいくつかありますが、まずオレ自身あの戦いでサンドルに敗けた。」
「人生で初めて敗けました。」
「今までオレは戦いにおいて敗けたことがなかったんですよ。」
「敗けたことがあんなに悔しいなんて思いませんでした。」
オレは一呼吸置いて、さらに続けた。
「オレの前に住んでいた国では昔ある政治家がこう言ったことがありました。」
“2位じゃダメなんでしょうか”と
「ダメに決まってるだろうが!!!!」
オレはテーブルを力強く叩いた。
「確かに戦いなんだから、敗けることもあります。」
「でもそんな最初から敗けることを前提にしていては一生その人には勝てません。」
「2位であることに満足をする人は一生かかっても1位になることはできないでしょう。」
「常に勝負には全力を出す、そして常に勝つことを意識し、勝負を投げ出さないそれが勝つために必要なことなんです。」
「まぁオレに言わせればの話ですが―――」
それまで一緒に座っていたフラムさんとマリーは突然オレが大声を出したことに驚いた。
「最終的に何が言いたいかっていうと。」
“負けっぱなしは悔しいじゃないですか!”
オレが言い終えると、フラムさんは何か付き物が取れたように笑い出した。
「ハッハッハッ!」
「そうか!そうだよな!」
「負けっぱなしは悔しいよな!」
「よし、決めた!ススム君、君の提案に乗ろう!」
「オレは君たちのパーティに入れてくれ!」
「ありがとうございます!もちろん歓迎しますよ。」
「フラムさんよろしくお願いします!」
マリーも嬉しそうだった。
この日、フラムさんがオレたちのパーティに加入した。