テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺は説明書もチュートリアルもないゲームを模索するように、何かしら自分のことがわかるものがないかを探す。
一応攻略サイトを運営していたこともあり、グローリーナイツのことならば、ほとんどのデータが頭の中に入っている。ヒロインの誕生日からバストサイズも全て言い当てられるが、それはあくまで主人公サイドの話。敵側の日常生活なんて知らない。
「自分の能力って見れないのか? メニュー、パラメーター、ステータス」
適当に呪文っぽく口に出すと、眼の前にグローリーナイツでよく見るメニュー画面が表示される。
一覧化されたステータスには、ラウルの現在のステータスが表示される。
【ラウル・グランツ】
クラス:王族
年齢:14歳
身長:153センチ
体重:92キロ
レベル:3
HP:35
MP:5
筋力:F
魔力:F
敏捷:G
防御:F
魔防:F
スキル
チープオーダーレベル1(簡易催眠)
ブック(攻略情報)
装備 貴族の寝間着
貴族のパンツ
貴族の指輪
と表示される。
「うわ……わたしのステータスひくすぎ」
俺は両手で口元をおさえ、とんでもなく低いステータスに驚く。
「高いの体重だけじゃないか」
いや、そもそもグローリーナイツで敵として登場したラウルは、もっと年齢が高かったはず。つまりこれはゲーム開始前のステータスということになる。
ラウルはゲーム中何度か主人公と戦闘になるのだが、取り巻きのザコが強くて本体のラウルは弱いというパターンが多かった。
主にヒロインを権力や催眠など卑怯な手で寝取る、傲慢肥満系金持ちNTR担当なので、別にステータスが高くなくてもいいということもある。
「ちょっと待てよ、ラウルってゲームじゃ最後どうなるんだっけ?」
ゲームストーリーを考えていると、スキルの中にブックという気になるものがあったことを思い出した。
「ブック」
そう唱えると、俺の手の中に電話帳サイズの分厚い本が突然現れた。ハードカバーには、ばっちり日本語でグローリーナイツ攻略マニュアルと書かれている。
なんだこれ? と思い開いてみると、俺が攻略したことがあるヒロインのプロフィールと、ルート分岐表が書かれていた。
「これ、俺が作った攻略サイトのデータだ。なんでこんなものが……」
前世での転生特典というやつなのだろうか? 何にしても便利な能力である。
「ラウル、ラウル、ラウル」
自分の名前を呟くと、自然と本のページが開き、俺の名前の部分に赤のアンダーラインが引かれる。
海月
335
🍎🥧アップルパイ
なんて便利なんだと思ったが、書かれていた文字を見て顔が引きつる。
『ラウル――王国歴114年5月21日:プリシラに刺され死亡』
死亡エンドは一つだけではなく、どのルートの攻略情報にも過程や日時は違えど『ラウル死亡』と書かれている。
ラウルはわかりやすい敵キャラということもあり、進むルートによっては序盤で主人公やヒロインに成敗されてしまう。
「あれ? よくよく考えると、ラウルって最後まで生き残ってたっけ……ラウル・生存」
ワード検索をかけると、本のページが高速でめくられていく。なかなか本が開かず、どうやら検索に時間がかかっているようだ。
本を待っていると、扉から控えめなノックが聞こえてきた。
『ラウルちゃん、ママよ……その……声だけでもいいから聞かせてくれないかしら……もう……随分……』
俺はガチャリとドアを開ける。
「あぁどうもラウルですけど」
俺が顔を出すと、扉の前で立っていた女性が目を見開く。
大人びていて年齢は20代前半にも見えるし後半にも見える。栗色の長い髪に、目尻の下がった優しそうな目、上品な口紅が塗られた唇。プラチナのピアスと銀のネックレスが目を引く。視線を下げると驚くほどの爆乳で、北半球が露出したドレスを身にまとっている。
彼女はラウルの父親の愛人、確かステラだったか。
俺が出てきたことに相当驚いており、目を見開いている。
「ラウル……ちゃん」
「やぁどうもママ上、ラウルです」
普段彼女をなんて呼んでるか知らないので、適当に言ったが多分間違ってると思う。
彼女は2,3度目をぱちくりとさせると
「きゅう」
なぜか後ろ向きにバーンっと倒れた。
「えぇ……なんで?」
俺は使用人のメイドを呼んで、ステラを自室へと連れて行ってもらう。
ベッドの上で横になる彼女を見ていると、オールバックの白髪に老眼鏡、漆黒の燕尾服を着こなした、どう見ても爺やっぽい老紳士が隣につく。
「えーっと、あなたは」
「アルフレッド・セバスチャンでございます」
「なんでママ上倒れたんだ?」
「ラウル様、まさか奥様をママと!? この爺感動で前が見えませぬ!」
「いや、俺を置いて話をするな。なんで倒れたのか教えて」
「ラウル様と奥様がこのムカム島の別荘に入ってから丸2年、奥様はずっとラウル様を気にかけてらしゃいました。毎朝晩ラウル様の部屋を訪れては親睦を深めようとしていたのですが、ラウル様は自室に引きこもられていましたので」
なんだ、俺は異世界でも引きこもってるのか。
「しかしラウル様は悪くありません。第三王子であるラウル様は、王位継承権をなくし、王宮からこの島へと移されました。ほぼ島流しと言ってもよいでしょう。また奥様も立場上は義母ということになっていますが、ラウル様からすると血の繋がらない家族。接しづらかったと思います」
まぁ確かに父親の愛人と住まされるって、めちゃくちゃ気まずいと思う。
「ラウル様が心を閉ざされてからも、奥様はずっとラウル様に語りかけてきました。しかしラウル様は、うっせぇブス、話しかけんじゃねぇよ、父上の金目当ての娼婦がよ、と厳しく当たられていましたので」
俺めちゃくちゃ嫌な奴だな……。まぁそういうキャラなんだが。
「それが自ら扉を開け、ママと呼んだのです。奥様が失神されるのも無理ありません」
「なるほど……」
ラウルって、複雑な境遇で生きてたんだな。
他人ごとのように言ったが、自分のことである。
「ねぇ爺や、ステラさんって父上の愛人にしては若くない? 何歳?」
「22歳でございます」
「父上って何歳だっけ?」
「メッサー王は59歳になられます」
「父上若い女に手出してんな」
「その……大変申し上げにくいのですが」
「何?」
「メッサー王は、奥様のことを……いえ、やめておきましょう」
「?」
なんだよ気持ち悪い言い方するな。
爺やは口ごもって何も言わなくなる。
彼女には何か色々と秘密がありそうだ。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第2話、拝読しました。 ラウルのステータス、体重だけ高いの笑っちゃったけど、能力の「ブック」で自分の死亡フラグを確認する展開、めっちゃゾクッときました…!しかもどのルートでも死ぬって、もう絶望的じゃないですか😭 ステラさんが倒れたシーンはちょっと可愛くて笑いました。でも爺やの「申し上げにくいのですが」で何か隠されてる感じ、すごく気になります…! 続き、気になります。更新楽しみにしてますね🌙