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私は白澤涼夏(しらさわりょうか)。今日は私の祖父が亡くなったというので葬式に訪れていた。葬式ということでいつもは一つに結んでいる髪をおろした。職場では髪を下ろして出勤したら別人みたいと驚かれた。
私の弟は仕事の関係で実家には来ず、直で式場らしい。
「さあ。始まる」
そう私に声をかけたのは兄の陽翔(はると)。すでに私達は式場に着いており葬式が始まるのはもうすぐだった。今回は家族葬のため祖父の孫までしか来ていない。親族や友人などはいない。
「そいえば、大和来てないね」
私が隣にいる陽翔に言う。
「そうだな。まあそのうち来るだろう」
喪服に身を包んだ陽翔は答える。
「そうだ!おじいちゃんどうなってるかな…?」
「顔見てみるか」
二人がそう言った時。葬式場からとある悲鳴が聞こえた。
「キャーーーーー!!!」
それは女性と思われる若々しい声だった。私と陽翔は視線を葬式場に向ける。そこには陽翔の彼女である紬の姿があった。紬は棺桶を見ていた。それを聞いた陽翔はすぐさま紬の方に向かった。私もそれに続き、陽翔の後ろを駆け足で進んだ。
「どした?」
低い声で陽翔はそう紬に声を掛ける。
「棺桶…見て」
紬の言葉を聞き陽翔と私は棺桶を見た。そこには祖父ではなく弟の大和の姿があった。着ているのは喪服。自分で入ったのではないことが何となく分かる。
「大和!覚ませ!」
陽翔はそう声を掛ける。すると、「ん…ああ」と大和はすぐ目を覚ました。
陽翔は覗き窓をこじ開ける。そして棺桶を開け、なんとか大和を救出した。
「は〜困ったもんだな…」陽翔はそうため息を付いた。
「いやいやそれは俺のセリフ!閉じ込められて死人にされてんだぞ!?」
「というか大和がオールバックじゃないの珍しいね」
私は大和に質問してみた。大和はほとんど普段オールバックのため気になったのだ。
「いや。俺ちゃーんとセットしてきたぜ?きっと崩されたんだろう。俺の美しいオールバックが」
愉快に大和は言う。
「そんな事はいいんだ。おじいちゃんは?」
陽翔は言う。
「あ!そうだね。遺体がないし…」
「どっか行ってんじゃね?しらんけど」
大和は言う。
「しらんけどじゃない!これは事件だぞ!」
真剣な表情で陽翔は言う。
「紬、何か知らないか?」
「わからない…ごめん陽翔さん」
小さな声でそう紬は言う。
「いいいい。とりあえず俺はスタッフの方に報告をしてくる。ここで待っててくれ」
陽翔はそのままスタッフを探しに何処かへ行ってしまった。すると、葬式場の扉の方から渋い男性の声がした。
「どうしたんだ?」
私が後ろを振り向くとそこにいたのは父の兄である康介だった。
「それがですね……」
私が今までの状況を話す。
「なるほどな……」
「なにか情報等はありませんか?」
「すまないが俺からはない」
「そうですか…」
「そういや、父さんと母さんは?」大和が言う。
「確か、トイレの前で話していたよ」そう康介は答える。
その時、扉からスタッフを連れた陽翔の姿があった。すでに事情は話しているそうでスッタフの方はすぐ、警察に通報するよう言った。しかし、大和がそれに口を挟んだ。
「でも、これくらいのことで警察は動いてくれるかね〜?俺達でやるのは?」
「なぜそう思う?」陽翔が言った。
「いや、普通にね」
不自然に警察に通報することを反対している大和はなぜか疑われていた。
だが、警察がどこまで動いてくれるかどうかそれは分からなかった。
「まあ大和君の言うことも分かる。とりあえず、この中で犯人探しをしないかね?」康介は言った。
「ですよね?康介さん!そうしましょう!」二人がこうなってしまってはしょうがない。周りの人も渋々、犯人探しをすることになった。
と、その時。スタッフが電話のため少し離れた。そして、スタッフは戻ってくるなり5人にこう言った。
「貴光(たかみつ)様のご遺体があったそうです!」