テラーノベル
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教室のざわめきは、ますます陰湿さを増していった。誰が言い出したのかも分からない噂が、まるで毒のように教室中に染み渡っていく。
「あいつら、共犯者だってよ」
「守ってるふりして、実は操ってるんだって」
「日下部が遥に甘いのは、単なる演技らしいぜ」
「触ってるところ、見た奴もいるって話だ」
そんな言葉がささやかれ、笑い声がこぼれる。
だが、それは確かな証拠でもなければ、誰かが確信を持っているわけでもない。
ただの噂、ただの妄想。それが噂の“かたち”だった。
ある日、教室の大型スクリーンに、突然「匿名告発」が映し出された。
その文章は、「日下部が遥を利用し、守るふりをしながら実は操っている」という歪んだ解釈で綴られていた。
スクリーンの前でざわつく生徒たちの視線は、遥と日下部に冷たく突き刺さる。
さらにSNSでは、日下部が遥に肩入れする理由を勝手に捻じ曲げた投稿が拡散された。
「ただの恋愛ごっこ」「特別扱いされてるだけ」など、無責任で残酷な言葉が羅列されていた。
その結果、日下部の周囲は急速に冷え込んでいった。
以前は彼を「守る存在」として見ていたクラスメイトたちも、今は「共犯者」として遠ざけるようになった。
一方、遥は声を失い、教室の隅で小さく縮こまる。
だが、心の中では激しい怒りと絶望が渦巻いていた。
「なんで……なんでこんなことに……」
誰にも助けを求められない孤独が、彼をさらに深い闇へと引きずり込んでいく。
そんな中で、日下部は遥の沈黙の殻を破ろうと静かに決意を固めていた。
「言葉じゃ、もう届かないかもしれない……なら、行動で示すしかない」
彼は、たとえどんなに周囲から非難されても、遥の側に立ち続ける覚悟を胸に抱いていた。
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