テラーノベル
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デックは隣国に戻ると、アシュレイと新たに約束を交わした。 どんなことでも協力する。代わりに一族を捜すことを手伝って欲しいと。
デックの村の話を聞いたアシュレイは、快く承諾する。
そしてこの時に、デックはアシュレイの計画を聞く。
アシュレイは、隣国を侵略しようと考えていた。でもいきなり攻め込んだりはしない。ゆっくりと弱体化させていく。じわりじわりと。まるで布に染色が染み込んでいくかのように。
アシュレイは、のんびりと暮らす王子ではなかったのだ。無能な兄達を|退《しりぞ》け王となる。その為には手柄が必要だ。隣国の大半を侵略、もしくは国政を乱れさせれば、父王も認めざるを得ない。幼い頃から、ずっと考えていたらしい。
デックは出身国が侵略されると聞いても、止めなかった。もう村はなかったのだ。きっと身分が高いだけの偉そうな騎士や領主に、皆は|攫《さら》われ殺されたのだ。母さんもリオも。そんな国、どうなったって知るものか。
そして準備を進め、デックが成人して一年が過ぎた頃から、計画を実行する。めったに人前に姿を表さない強い魔獣を、デックの魔法で刺激して出現させる。魔獣が暴れれば土地が乱れ人が死ぬ。国の中枢は、魔獣退治に労力と人員を裂かれ、国政が|疎《おろそ》かになる。
そして騎士の手にあまる魔獣を止めるために、魔法を使う者が出てくるかもしれない。これはアシュレイの計画とデックの望みが両方叶う方法だ。
長い長い話を終えて、デックが深呼吸をする。そして身を乗り出し、机の上に置かれたリオの手を握りしめる。
「この作戦を開始して、一ヶ月余りでリオと再会できた。家族の次に気にかけていたリオと再会できて、嬉しかった。他の誰とも再会できていないけど、この作戦は始めたばかりだ。だからこの先、他の仲間にも会える可能性はある。そしてアシュレイの目的は、まだ果たせていない。俺はアシュレイの目的を果たすまでは、協力していくよ。なあリオ、おまえも協力しないか?そうすれば、生き残った村の仲間にも会えるかもしれない。俺達、せっかく会えたんだ。俺はリオと離れたくない。昔みたいに、ずっと一緒にいよう」
「嫌だね」
リオは即答した。
デックはなにを言ってるんだ?正気か?アシュレイが他国を侵略すると言ってるんだぞ?俺達が生まれた国を。ギデオンがいる国を!そんなことに協力できるか!
握られた手を離し、リオはデックを睨む。
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