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『 リーダーの「オフ」が溶ける時 』
撮影の合間、楽屋には勇斗と仁人の二人だけが残されていた。 仁人はソファの端で台本を読み耽っている。その真剣な横顔に、勇斗は少しだけ面白くない気持ちを抱いていた。
「……ねえ、仁人」
「んー? 今ちょっといいとこ。後にして」
素っ気ない返事。リーダーとしての彼はいつもこうだ。真面目で、ストイックで、グループのことを一番に考えている。 でも、勇斗は知っている。その「リーダーの仮面」の下にある、本当は寂しがり屋で、誰かに甘えたいはずの心を。
勇斗は音もなく立ち上がると、仁人の背後に回り込み、その細い首筋に腕を回して抱きついた。
「うわっ!……ちょっと、勇斗、重いって!」
「無視すんなよ。俺と台本、どっちが大事?」
「子供みたいなこと言わないの。……っ、ちょ、どこ触って……」
勇斗の手が、仁人の腰を服の上からゆっくりとなぞる。仁人の体がビクンと跳ね、耳の先まで一気に赤くなった。 勇斗はわざと顔を近づけ、仁人の耳元で低く囁いた。
「仁人、顔赤い。……台本どころじゃないでしょ、これ」
「……お前の、せいでしょ……っ」
仁人は逃げようとするが、勇斗の腕の力には到底かなわない。 観念したように仁人が力を抜くと、勇斗は彼の肩に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
「……勇斗?」
「……リーダー頑張ってんのは分かってるけど。俺の前でくらい、ただの『吉田仁人』でいろよ」
その言葉に、仁人の抵抗がピタリと止まった。 勇斗は、仁人の手が自分の腕をそっと掴み返したのを見逃さなかった。
「……勝手なこと、ばっかり言って……」
毒づきながらも、仁人は自ら勇斗の胸に背中を預けてくる。 勇斗は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、そのまま仁人の顎をそっと持ち上げた。 これから始まる、誰にも見せない二人の時間。 仁人の潤んだ瞳が、リーダーではない一人の男として、勇斗だけを映していた。