5話 堕天使
「デリット!!!」門の外にはデリットが立っていた、嫌悪を隠す気がないその表情で。
「あぁ、やっぱりウィングの言った通りだった、帰ってきてくれたんだね」ヘリックはデリットを抱き締めようと走って近寄る、だがデリットはその手をパシンと音を立てて振り払い
「やめろ、気持ち悪いな」デリットは普段の優し気な物腰とは裏腹に目の前にいるヘリックに対して冷たくあしらう。
「近寄るな、お前に用があるんじゃないんだからな」ふいと顔を背け、門の中へと入っていく、ヘリックは唖然とした様子でその場にポツンと立っていれば後ろからウィングが近寄ってきてヘリックの手を取った。
「大丈夫かい、ヘリック。デリットは酷いやつだね、可哀想に」と軽く手を撫でれば眉を下げ悲しげに呟く
「…やっぱり」ヘリックは口を開き、瞳孔を細める。ウィングはその様子を見つめては驚いた表情を見せる。ヘリックの表情、目には光が入っておらず、真白く染まった瞳に美しい金髪の毛先は白く染っていた。
「やっぱり、悪魔に唆されたんだ…デリット、デリット可哀想…可哀想だな」デリットに嫌われたと落ち込むのでなく、悪魔に唆された…とウィングの言うことを真に受けて落ち込んでいた。
「少し休もうヘリック、その様子だと疲れただろう?頭も休めるためにね」と落ち込んだ様子のヘリックの頭をそっと撫でる
「でも…でも!デリットが…」そう言うとウィングは一瞬驚いた顔をするがニコリと笑みを浮かべて
「そう心配することは無いよ、私が全て解決してあげよう。君の代わりにね」
「いや、でも私がやらないと…」
「私の言うことが聞けないのかい?ヘリック」と言って彼の頬にそっと手を置く
「後は私に任せておきなさい、ヘリック、貴方は何もしなくていいのですよ」瞳を開けばいつもの優しげな彼の顔、ウィングの瞳には淡いピンクの紋様が刻まれていてそれが優しく光を帯びている。ヘリックの瞳を見つめれば、突然と頭が呆然と働かなくなるだろう。
「…うん、分かったよウィング、ありがとう!」ヘリックは笑みを浮かべて小さく頷く、その様子はいつもと全く変わりがない。「いい子だ、さぁ自室にお戻り」と手を離せばひらりと手を振るだろう。そしてヘリックは自室にウィングはデリットの元へ向かう。
前にも上にも長い廊下、足音を響かせながら歩を進めていくだろう。
「気味の悪い道だ」一言呟けば正面にはふたつの姿が視線に入る「あれは…」デリットは目を細めてじっと奥を見るだろう。そこに居たのは上級天使 第四階級「レミット・ロウディン」「ナジア・ロウディン」の二人だ。この二人は上級天使で初めての双子であり、片方は頭が良く、もう片方は運動神経に長けている。そしてお互い左右片方づつ羽が着いていて二人はお互い離れようとはしない。
「お前たちは話のわかるやつだと信じてるぞ、そこを退け」デリットは双子の前に立てば冷たい声付きで突き放すように放つ。双子はしばらく無言でいれば「一応僕たちもここに住む天使だ」「君がなんの用でここまで来たか知りたいな」彼らは同じ体制でその場に立ち尽くす、その様子は実に気持ちが悪い、俺はそう放つ彼らに舌打ちを返し もういい と一言返して彼らの横を通り抜ける。双子はわざわざデリットを止めようとはせず、ただ正面をじっと見つめている。
「僕たちは天使だけど」
「ほとんど中立のようなものだよ」
「「だから君を止める気はない」」と此方を向く素振りはせずにデリットに伝える。デリットも足は止めずに奥の部屋へと進む
──ほんとにここは居心地が悪い
…
「おーいアグラン、聞いてる?」教室でボーッと授業で使用した魔導書を見つめる。アグランは何か考え事をしているのかイエンの言葉は彼に届いてないようだ。
イエンはその様子に首を傾げてうーんと唸る
と、なにか思いついたようにハッと表情を大きく変えればアグランの耳元に顔を近づけ「おはよう!!」と大声で叫ぶ、それにアグランは驚き、体制を崩して椅子から落ちそうになる。
「び、びっくりした…」アグランは高鳴る鼓動を落ち着かせるために軽く深呼吸を行い、イエンに体を向けた
「おいおい大丈夫かよアグラン、お前が深く考え込むなんて余っ程だろ」イエンはそう言って目の前に置いた弁当を口に頬張る、今は昼食の時間だったようだ。
「いや、俺ちゃんと騎士団に入れるのかなって思ってな」アグランはカバンからパンを取り出せば小さく口に含む唐突なその発言にポカンと口を半開きにしたイエンが俺を見つめては箸で挟んだ肉団子がポロリと落ちる。
「あっ…!」イエンは肉団子に視線を向けて取ろうと手を伸ばす、すると机の下からヒョコりと突然知らぬ顔が出てきて
「!??」
落ちた肉団子はその人の口の中に入った、イエンとアグランは急なその状況に固まり、今起きたことを頭の中で整理する、それと同時に机の下から出てきたその人は這って出てきてその場で立ち上がる。
そして呆然としていたアグランは「あの、誰っすか」と質問を掛けた。
その人はここの学生ではない服を身にまとっている。長髪でサングラスを掛け大きな魔導書を抱えている女性だった
でもこの服、どこかで見た事あるような…
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