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profile
相川 柚「あいかわ ゆず」
1年生
国見 英「くにみ あきら」
1年生
Quiet Monopoly=静かな独占
えりりんちゃんに届けっ!!
Quiet Monopoly Start
窓の外から、運動部の掛け声と、遠くで跳ねるボールの音が聞こえてくる。
午後の授業、終わりのチャイムが鳴り響くと同時に、私は大きく伸びをした。
「……よし、これで課題終わり」
ノートを閉じ、ふと隣の席に視線を移す。
そこには、いつものように机に顔を伏せて、微動だにしないクラスメイト――国見英くんがいた。
セットされていないはずなのに、さらりと整った髪が、午後の光を透かして柔らかそうに見える。
「……国見くん、また寝てる」
そっと呟いたつもりだった。けれど、
「……起きてる」
掠れた、低い声が返ってきた。
彼はゆっくりと顔を上げた。少しだけ眠そうに細められた瞳が、気だるげに私――相川 柚を射抜く。
「うわ、びっくりした……! 起きてるならノート写しなよ。次の時間、テスト範囲の復習だって先生言ってたよ?」
「……だるい。……後でいい、相川」
彼はそう言って、また机に突っ伏そうとした。その時――。
「あ、柚! さっき言ってたプリント、これだよね?」
前の席の男子、田中くんが勢いよく振り返った。
「あ、そうそう! それだよ、ありがとね。……あれ、田中くん、消しゴム探してる?」
「あー、マジでどこ行ったんだろ。筆箱忘れたわけじゃないんだけど……」
「ふふ、じゃあこれ貸してあげる。予備だから、授業終わるまで使っていいよ」
「マジで!? サンキュ、柚。お前マジで天使だわ!」
田中くんが屈託のない笑顔を見せる。私もつられて笑いながら、自分の予備の消しゴムを手渡した。
その瞬間。
「…………」
刺すような、冷たい視線を感じた。
横を見ると、国見くんが完全に体を起こし、無表情でこちらをじっと見つめている。
「……国見くん? どしたの、そんなに睨んで」
「……別に。睨んでない」
「でも、顔怖いよ?」
「……。田中、早くそれ持って行けば。邪魔」
国見くんの声は、いつもより少しだけ低く、棘があるように聞こえた。
田中くんが「お、おう、じゃあな!」と不思議そうに前を向くと、国見くんは椅子を少しだけ私のほうへ寄せた。
「……ねえ、相川。手、出して」
「え? なに……?」
言われるままに掌を上に向けると、国見くんは自分の筆箱から、使い古された消しゴムを一つ取り出した。
そして、私の掌にぽん、と置く。
「……これ、使って」
「え、国見くんの消しゴム? でも私、自分のあるし……さっき貸したのは予備だよ?」
「……いいから」
彼は私の言葉を遮るように、少しだけ強い口調で言った。
「……あいつに名前で呼ばれて、ヘラヘラして……。あいつの匂いとかついたやつ、使わなくていい」
「え……?」
意味がわからず固まる私を置いて、国見くんはプイッと窓の方を向いてしまう。
でも、机に伏せる直前。
彼の白い耳が、不自然なほど赤くなっているのが見えた。
奪われたのは、小さな消しゴム。
でも、それ以上に何か――私の平穏な日常が、彼に少しずつ侵食され始めているような。
そんな予感がした。
コメント
3件
わーっ今回もヤバすぎるっ、、 コメント遅くなったの悔しい、、、