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「いやー良いお風呂でしたねえ」
「っあー!おふろ上がりにはアイスが食べたくなるんだぞ!うーよし決めた!ちょっとそこまで買って」
「あっ、おい馬鹿!どこ行くつもりだ」
「アイスか〜ええなぁー親分も食いたなってきたわぁー」
「いやお前は今日のレポート書けよ。時間あったのにお前ずっと昼寝してただろ?」
ガラッと襖を開け、畳に足を踏み入れた瞬間部屋が一際賑やかになる。いつもより少し早い時間でも既に深夜テンションに入り始めている面々は、食事と温泉、そして奥深き古風旅館に魅了され、完全に浮かれきっていた。
くじ引きで決まったこの部屋班は、個人個人が個性的ながらも案外まとまっている。メンバーは菊、アルフレッド、アーサー、アントーニョ、ギルベルトの5人だ。
「えーギル冷たいわー、修学旅行ぐらいそんな生真面目にならんくてもええんちゃう?」
「いーや、今終わらせといた方がいいぜ。後々先生が回収するってよ。」
「へ、そうなん?うわ終わる気せーへんわー!もーこーいう時フランも一緒に居ってくれればええのにー」
「アイツは、、、まあ仕方ないだろ。くじ引きで別の班に行ったんだから。本人はめっちゃ悔しそうだったけどな。
ちなみにあのフランシスでさえもレポートは一応書いてたぜ。ほらお前も書いた書いた」
「うはー、やりとーないぃ、、、」
「お、おい菊!見てねーでこの馬鹿止めるの助けてくれ!」
「いやだー!もう一日も甘いモノ食べてないんだぞ!せめてジュースぐらい!」
「おまっ昼間ソフトクリーム食べてただろ!!」
「え、ええと、あ、そうだアルフレッドくん、ここにお茶請けのお饅頭が置いてありますよ」
「!!本当かい!?ぜひとも食べたいんだぞ!菊!早くちょーだい!!」
「そ、そんなに焦らなくとも逃げたりはしませんよ、 」
「やったー!いただきまーす!!」
「あ、おい!全部食うんじゃねえぞ!ったくもう、これだからコイツとの班嫌だったんだよ、、、」
「ま、まあ、、、賑やかで楽しいじゃないですか」
「、、、先が思いやられる、、、」
教師から部屋では騒ぐなと何度も忠告されてはきたが、一体いくつの部屋が言いつけを守れて居るのだろう。
疲れているはずなのに眠気は一向に訪れず、ただ騒がしいだけの時間が過ぎていった。
「、、、あ、もうそろそろ消灯時間だな」
「まあまだ電気は消さなくてええやろ?実質夜はこれからなんやし」
「トーニョの言う通り、やっぱり1番肝心なのは修学旅行の夜だと思うぜ」
「、、、でしたら、皆さん、せっかくなので修学旅行らしいことをしてみませんか?」
「「「「修学旅行らしいこと?」」」」
「んー、、トランプとかか?俺様持ってきてるぜ!ルッツとじゃんけんして手に入れたんだ!!(UN〇は譲ったけどな!)」
「おおー!ナイスなんだぞ!やっぱりババ抜きかい?それとも大富豪とかやっちゃう?」
「ええやんええやん!やっぱ皆で盛り上がれんのはトランプに限るやんな!」
「んー、あと他に修学旅行らしいことって、、、何かあるか?」
「そうですね、、、例えば、 恋バナとかいかがでしょう」
菊が言い放った途端、全員の動きがピシリと固まった。その中でも1番肩が揺れたのはのはアーサーだ。
「、、え、えぇえーっっと、、、、き、菊、?恋バナってどういう、、、」
「おや、ご存じないですか?恋のお話ですよ、皆さんの。そういった話はあまりした事ないじゃないですか。1度やってみたかったんです」
「いや、それは知ってるんだけどよ、、、」
「、、、それって全員参加かい?」
「はい。勿論。全員で楽しまなければ損でしょう?」
「、、、まあそこのバカ動揺してる眉毛は置いといて、やっぱこう、トランプとかでええんちゃう?みんながみんなそういう話出来るか分からんしな、な?」
「確かにそうですね、、、折角持ってきてもらいましたし、、、じゃあこうしましょう。
ゲームをして最下位だった人が自分の恋のお話をする、他の人達は質問をしても良くて、最下位の人は必ずそれに答えなければいけない、といったようなルールでどうですか?
できる限り皆さんの要望にお応えしたつもりですが、、、」
なんか悪化したような気がする、という言葉は一同グッと飲み込んだ。
この友人は一見お淑やかそうに見えて急にとんでもないことを言い出すから侮れない。
こちらを見やる黒い瞳は今や期待を隠しきれていない様子だった。 「駄目、、、ですか?」と明らかに狙ってやっている上目遣いをされると、いくら分かっていても言葉に詰まってしまう節が全員にはある。
「、、、分かった、やるぜ」
「えっちょっ、ギル!?」
「やんのかよお前!?」
「いや、まあでも考えても見ろよ。最下位にさえならなければ言わなくて済むんだぜ?しかも、負けたヤツを好きなだけ弄れる権利付き」
そう、恋バナをするのはゲームで負けた人だ。それも最下位の人ただ一人。全員言って妙に気恥かしい空気になるのも避けられるし、普段はあまり踏み入れないプライベートな部分も知ることが出来る。
まさにハイリスクハイリターンな勝負だ。
「、、、確かにおもろそうやなぁ、、よし!親分もその勝負乗ったで!!」
「俺もやってみるんだぞ!!なんてったってヒーローだからね!!」
「は、お、おいお前ら!?」
「、、、アーサーさんはどうなされますか?」
「え、お、俺は、、、」
その場にいた全員の視線がただ1人に集まぅた。自分も腹を括ったんだからお前もやれ、という気持ちと、そこまで動揺してるんなら絶対何か隠してるだろという気持ちがじんわりと伝わってくる。生暖かい無言の空気に耐えきれなくなって、ついにアーサーは口を開いた。
「、、、分かった、やってやるよ」
「ありがとうございます!!」
菊はこれ以上無いぐらいに満面の笑みを浮かべた。だが愉快に思う心を隠しきれていない。
「でもお前が負けたらちゃんと言えよな!!ルールはルールだ!!」
「承知の上です。それでは皆さんの了承も得たことですし始めましょうか。誰のお話を聞けるのか楽しみですね。
、、、まだまだ夜は長いですよ」