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1話で終わりの物語

2 - 第2話 千咒がショートの理由

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2022年07月14日

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『姫。姫ってさ、なんでずっとショートなん?』

『…え?』

ワカが後ろから突然聞いてきた。

『こだわり?』

『…別にそういうわけじゃねーんだけど…実はさ』





『千壽!起きろっ!』

『んむ…ハル兄うるさぁぃ…』

『学校遅れるぞ!!!』

『それはやだ~!』

『はやく、髪結ってやるからあっち向いて』

『ん…』


毎朝毎朝ジブンを起こしてくれるハル兄。

ジブンを起こして、髪を結ぶ。

その髪を結ぶのが、とっても丁寧で綺麗で。

嬉しかった。


『おし、出来た』

『わぁ、ありがと!』

『…いつも思うけどそんなキラキラさすなよ、目』

『だって凄いんだもん!!キレー!』

『はいはい、早くランドセル背負って。行くぞ』

『はーい!!』


少し荒っぽい性格だけど、ジブンの面倒を見てくれて…そんなハル兄が大好きだった。


大好きなハル兄を、ジブンは悪者にした。



『…あ、もう遅刻しちゃった…』

『…髪…結ぼう』

ハル兄が居なくなってから寝坊しちゃうし、

『…やっぱり汚い…』

そう、髪が結べない。

タケ兄にも結んでもらったけど、タケ兄も無理だった。


『…ハル兄…』

『ごめん…ッまた…髪、やってよ…』

そんな願いは惜しくも叶わない。


どれだけ名前を叫んでもハル兄は戻ってこない。

何よりジブンがハル兄を狂わしてしまった。

『ごめん、ごめん、ごめん』

どれだけ謝っても、過去は変わらない。






『実は…髪、ジブンで結べないんだ。』

『へぇ、オレがやってやるのに』

『毎朝は大変だろ笑』




7月7日


『約束…守ったぞ。』

『千咒ッ…!!!!!』

最後に頭に浮かんだのはハル兄だった。

まだ謝れてない、まだ会えてない。


まだ、まだ、まだ。



…また…髪、結んでよ。





千咒がショートの理由───。

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