京子の突然の登場により、凛子と誠の問題に希望の光が見えてきた。
「娘さん、あんたの話が正しければ貞治はこの村に留まり続ければ生きていけると言うことか?」平田さんが京子に問いかける。
「私も先の事はわからないし、保証はできない、禁足地の泉の水が枯れない保証もない」
泉の力に頼りたい平田さんの気持ちもわからない訳ではないが京子は正直な気持ちを伝えた。
「わしがあの日、禁足地に行こうなど言わなければ。。。」悔しさを滲ませ振り時ぼるように平田さんは呟いた。
「平田さん、過ぎてしまったことは仕方ないですよ、それより貞治くんの為に何か打開策を練りましょう。」ジレンマが落ち込む平田さんに声をかける。
「じぃちゃん、鮎取ってきたよ!」
魚籠に溢れんばかりの鮎を拵えて貞治が川から戻ってきた。
「外人さんもきたの?」貞治は京子を見てそういった。
「Hello!」京子は貞治に笑顔で答える。
「さぁさぁ、皆で食事にするか」平田さんは貞治の前で気丈に振る舞う。平田さんは、貞治と誠、そして凛子を誘いと土間の方へ向かった。
「ジレンマ、もちろん、手ぶらで来てないよな?」京子が小声でジレンマに話かける。
「万が一のアイテムはシコタマハイエースに積み込んできたよ。」自信満々にジレンマが答える。
「凛子が来たことにより、ざわつき始めてる。この建物の周辺に防衛線を張った方がいい、今はまだ日があるから大したことはないが夜になれば干渉してくるだろう」
京子が言うには、村や山に潜む、妖やら霊魂やらが活発化してきたという。
平田さんの計らいでジレンマ達は今夜はこの資料館を宿にすることなり、京子の提案で平田さんと貞治も皆とここに泊まることになった。
ジレンマはハイエースに行きハッチを開けて探り出す。
「ジレンマなんだこれ?」修羅はジレンマが取り出したモノに拒絶する。
「秋葉原の雑踏漬け‼️」
まず一個目のアイテムのようだ、名前からして怪しい。
「1番人通りの多い交差点のマンホールの蓋の裏に2年間放置したんだよ」
雑踏で呪物を作ると言うのは古来の日本ではよくあったモノである。昔は人通りの多い道に呪物を埋めて数多くの人に踏ませる。人につく良からぬもの、思念、運命などが踏まれる事によりどんどん引き寄せられる溜まり、強大な負のエネルギーとなるのだ。
ジレンマが手に取っていたものは金箔のはげた木彫りの観音像であった。
霊感の強い、修羅にとっては吐き気を誘うほどの代物である。
「もともと、相当な呪物だったこの観音像をさらにパワーアップさせたからね」
この観音像はマタギが仕留めた人喰いクマの胃袋の中から見つかったものだ。このクマの被害者は数十人その中の誰かの持ち物であったのだろう。
マタギのいた村で供養をする為、祀られていたが、悪影響が強くパラドックスに流れてきたものであった。
さらにジレンマは荷物をあさり出す。限られた時間の中で準備しなければならない。何故かジレンマは楽しいそうであった。それもそのはず、色々な呪物を試すのが趣味であるからだ。