TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「はぁはぁはぁ」


「はぁはぁはぁ」


空が青く雲が流れ、爽やかな風が髪を揺らす。

現在俺は、体力を使い果たし仰向けに倒れているところで、久々に全力を出したことに満足している。


「ううう、まさか私と張り合える男がいるとは思わなかったす」


隣では、先程の少女が同じく倒れて空を仰いでいる。彼女が呼吸をするたび、胸がプルプルと震えるのだが、俺にはアリサがいるのでそういう視線を向けるのはまずいと判断し、目を逸らしておく。


「結果は、コウが120点、サリナも120点の同点とする!」


そんなことをしていると、現場監督が俺と彼女が運んだブロックの数を告げてきた。いまさらだが、俺は競い合っていた少女の名前がサリナだと知った。


「むむむむっ! 同点っすか! 納得いかないっす!」


体力が回復したのか、サリナは身体を反らし、バネのように立ち上がると現場監督に抗議した。


「どうみても、あのひょろい男より、私の方が貢献したっすよ!」


その言葉に苛立つ。

確かにここの作業員に比べると筋肉質ではないが、女の子に「貧弱」認定されると傷つく。

俺は身体をふらつかせながらも立ち上がると、


「いや、俺の方が役に立ちますよ」


サリナの横から口を挟み、現場監督に主張した。


「はぁぁぁぁぁぁぁ! あんたバテバテでしょうがあああああ! 私はまだ余裕があるっすよおおおおお!」


大和撫子で完璧なプロポーションを持っているサリナだが、口を開くとこの上なくウザイ。

本来なら女性に優しくする俺だが、サリナにだけは気を遣う必要がないのではないかと思ってしまった。


このまま口論を続けると、相手と同じ土俵に立ってしまう。もっと、目に見える形でやり込める方法はないか……?

ふと、俺はブロックを運び終えて空き地になっている場所に目を向けると、良いアイデアを考え付いた。


「皆さん、ちょっと離れてもらえますか?」


俺の言葉に、現場監督も、作業員の男たちもその場から退く。


「まだ話はついてないっすよ! 何をするつもりっすか?」


サリナが顔を近付け威嚇してくる。とりあえず無視だ。

元々この仕事をしにこの場に来たのでちょうどいい。


俺は手を前に突き出すと、


「岩塊よ! 集え!」


――ズンッ――


「「「「「なあっ!?」」」」」


現場監督とサリナ、他の作業員が声を上げる。

空き地にブロック大よりも大きな岩塊が作り出されたからだ。


「元々俺はこっちの仕事で呼ばれたんだよ。魔導師相手にイキがって恥ずかしくないのか?」


口元に手を当て「ぷぷぷ」と笑ってみせる。

本職ですらない相手に力比べで互角となると、流石に何も言えないだろう。


サリナはプルプルと身体を震わせる。余程悔しかったのか?

俺が顔を覗き込もうとすると……。


「ムキーーーーッ! ちょっとこっちが優しくしていたら調子にのるなっす! さっきまでのは本気じゃないっすからねっ!」


サリナは怒りに身を任せ突進していくと、俺が作り出した岩塊に抱き着く。

一体、何をするつもりなのだろうか?


「本当はお腹が減るからここまでやるつもりはなかったっすけど、あの男に言いたい放題言われるのは我慢ならないっす!」


彼女の身体が輝く。アリサが身体強化を使う時にも淡く光るのだが、これは明らかにそれ以上の……。


「ぬわあああああああああああああああああああああっ!」


サリナは岩塊に指を食い込ませると、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「まさかっ! あれを持ち上げるつもりなのか?」


「あの大きさなら20ブロックはとれるはずだぞ!」


つまり1600キロ以上。普通に考えれば持ちあがるはずがない。


「私はああああああああ、男に負けるのがあああああああああ。嫌なんすよおおおおおおおおおお!」


ところが、徐々に岩塊が持ち上がって行く。


「嘘だろ!?」


この重量を持ち上げるのは今の俺では無理だ。一体彼女は何者なのだろう?


「へ、へへへへ。見たっすか!」


後ろを振り返り俺の表情を窺うサリナ。その笑顔だけ見ればとても魅力的で、とてもこのような怪力をもっているとは思えない。


「もういいから、岩をおろせ!」


現場監督が焦って叫ぶ。というのも、サリナの身体がフラフラし始めたからだ。


「あれ……あれれ……?」


彼女は目を回すと、


「駄目っす! もう、力がのこってな……い……」


――ズトンッ――


「「「「あっ!」」」」


次の瞬間、折角建てていた壁の一部に岩が倒れ、その場を破壊した。





「うううう、稼ぎがぱぁっすよ……」


サリナは泣きながらとぼとぼと歩いている。

それというのも、先程壁を破壊したせいで、弁償金が発生してしまい、今回のバイト代が帳消しになってしまったのだ。


「完全に自業自得だろうが」


無理に張り合おうとしなければ問題なかった。もっとも、挑発したおれにも少しは原因があるので可哀想だとは思うのだが……。


「ところで、一体どこまでついてくるつもりなんだよ?」


あれから、俺は現場監督から依頼料を受け取った。

ブロック運びと石材の精製のダブル収入となったので、懐具合は相当に暖かい。


「ああ。今日の食事代も、泊る場所もないっす」


あとはアリサの下に戻って今日の報告とイチャイチャタイムを楽しむだけなのだが、先程から後ろで露骨にアピールしてくるサリナが鬱陶しい。


「無一文とか、一体どういう金の使い方してるんだ?」


無視し続けても延々ついてきそうだったので、俺は仕方なくサリナに声を掛けた。


「違うんす! 昨日の夜までは結構まとまった金貨があったんす!」


「なら、その身分証に入ってるんじゃないのか?」


中には身分証払いができる魔導具を扱ってない店もあるので、多少の小銭は持ち歩く必要はあるが、基本的に大金はしかるべき施設で身分証にチャージするようにしている。


「それが、昨日、原因不明の竜巻に巻き込まれて服がボロボロになったんすよ。それで気が付けば財布を落としてしまったみたいで……。せっかく、レアなモンスターを討伐して報酬を得て美味しいものを食べようと思ってたっすのに……」


つまり、浮かれた拍子にチャージするのを忘れてしまい、現金を落としたということらしい。


「慌ててもと来た道を探したけど見つからなかったっす」


「そりゃそうだろうな……」


金貨が入った袋なんて落ちてたら、余程のことがなければ戻ってこない。現実世界と違い、法の整備が甘いので、たとえ兵士に渡したとしても着服されるのが関の山。

拾った人間が届けても持ち主の手に戻る可能性はゼロだ。


「それで、冒険者ギルドに行って泣き付いたらこの仕事を紹介してもらったんす。給料をもらえなかったら、今晩も野宿なんすよおおおおお!!」


今晩もということは、昨晩も外で寝たのだろう。


「……ちなみに食事は?」


「当然、昨日から何も食ってないっすよ!!!」


それは流石に可哀想だ。というか、サリナは昨日から何も食ってないのにあの怪力で働いていたというのか?

もしかすると、こいつ、とんでもない実力を秘めているのではないか?


――グオオオオオオオオオオオン――


「何事!?」


不気味な鳴動がなり、俺は警戒心を強める。


「今のは私の腹の音っす!」


お腹を擦り、弱った表情を浮かべるサリナ。黒髪黒目ということもあってか、現実世界での日本人を思い出してしまい、どうにも放っておけなくなる。


「はぁ、仕方ない。今日は結構稼いだから飯くらい奢ってやるよ」


「本当っすか! いくらでも食べていいっすか?」


「お、おう……。中々ずうずうしい奴だな」


この手のタイプはまず間違いなく良く食う。

具体的には、天下一武闘会で優勝賞金全額を一人で食いつくすくらいには……。


だが、たとえ今日の稼ぎが吹き飛んでも俺には関係ない。アリサからもらってる小遣いは相当な金額なので、これまで食べ尽くすとなるとそれはもう人間ではない何かということになる。


「ありがとうっす! コウはいい奴っす!」


急に懐き始めたサリナ。縋り付いてきているのだが、まるで犬のようだ。ツーサイドが尻尾の様に揺れている。


俺はサリナをともなうと、近くの酒場へと向かうのだった。


俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚