アイツには何度助けられたことか……
最初はムカつく野郎だと思ったのに、いつの間にかマブダチになっていたな……
何が騎士だよっ!騎士なのに…親友も助けられないのかよ……
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コンコンッ
「開いてるよ」
ガチャ
「今、お話をお聞きしても宜しいですか?」
「いぃっ!?王女様!?ちょっ!待って!片付けるからっ!待って!」
剣鬼ロードナント様は焦ったご様子で私を追い出しました。
確かに…人を招く部屋ではなかったですね……
剣鬼様の見た目は赤髪の短髪で、頬に切り傷があるヤンチャそうな見た目をしています。
「いいぞ」
「失礼します」
部屋に入ると、先程まで足の踏み場もなかったように見えた室内は、綺麗さっぱり片付けられていました。
クローゼットの扉が今にも弾け飛びそうなのは、見なかったことにしましょう。
「それで?王女様が態々こんなとこまで来て、何の話だ?」
こんな所と言いますが、ここは王城内にある騎士団の宿泊施設。
私は許可なく城の外には出られませんが、此処へくることにその許可は要りません。
勇者パーティで唯一自由行動が許されているのは剣鬼様のみ。
理由は明白。剣鬼様は元々騎士であり、今は魔王討伐の功績により近衛騎士に就いているからです。
もっと言うと、この方も当日のアリバイがある方なのです。
「あの日の出来事を伺いに参りました」
「ああ…アレね」
「あの日。城へと戻ってから、剣鬼様はどこへ行かれましたか?」
「パレードから帰った俺達は、城の入り口で一先ず解散したんだ。
タクマは部屋で休むと言って、マリアは大聖堂に行くっていってたっけな?
俺は長いこと騎士団から離れていたから、土産を持って帰還の報告にいったぞ」
調べた通りですね。
そもそもこの人に嘘がつけるとは思えませんが……
「その後は?」
「いや、報告に行ったらみんなが祝杯をあげててな…主役の俺がいないのにだぜ?信じられねーよな?な?」
同意を求められましても……
「んで、同僚達に捕まった俺は、タクマ達との集合時間まで飲まされていたってわけ」
「…なるほど。ではその方達が証人ということですね」
「ん?あっ!そうなるなっ!はっはっはっ!」
……これが演技ならとんだ大根役者ですね。
ですが、剣鬼様のアリバイは明白。
ここを崩すのは容易ではありません。
「ははっ。…それより、アイツはどうしてる?元気か?」
「タクマ様はお疲れの様子ながらも、気丈に振る舞っています」
「はっ。アイツらしいな。誰にも心配掛けまいと、いつも強がりやがる…」
そう言うと、剣鬼様は拳を強く握り締めました。
剣鬼様は自由とはいえ、王女の私ほどではなく、タクマ様を見舞えるのは私を含め、限られた人達のみ。
「タクマ様は真の勇者足るお方です。必ずや真犯人を見つけお救いしますので、暫しお待ちください」
「いや、王女様にも王家にも、この国にも思うところはねーよ。神器は神から与えられた王家の秘宝だ。
それが盗まれて、嫌疑を掛けられるアイツが間抜けなのさ……」
クソが。剣鬼様は最後にそう呟き、私は退室しました。
それが本音なのでしょう。言葉は違いますが、私も想いは同じです。
「へぇ…あのバカがねぇ」
剣鬼様との出来事をタクマ様に伝えると、懐かしそうに…どこか寂しそうに、そう呟かれました。
「犯人は何故、神器を盗もうとしたのでしょう?私にはその理由がわかりません」
「神器って建国王が神様から授かった物なんだろう?それなら高値で売れるんじゃないかな…」
「お金のために態々神器を狙うのでしょうか?」
私ならもっと簡単に盗めるものを、と考えそうです。
神器は神が魔の物から力なき人々を守る為に、サンジェルマン王家に与えた物。
もちろん魔の物に困っている国や街を管理する人達からすれば、喉から手が出るほど欲することは理解できます。
しかし、嫌疑を掛けられたのはそんな魔の物を簡単に屠る事が出来る勇者パーティの方々。
「うーん。確かにそれならもっと他の物を狙うか……
保管場所もしっかりしていたんだろう?」
「はい。只人では開ける事が不可能な魔導具に保管していました」
魔導具は人が作りし物。私には開けられませんが、所有者のお父様と宰相……後は勇者パーティの方々なら……
皆様人外の力をお持ちですからね。
これも嫌疑がより深まってしまう条件でした。
「それって壊されたのか?」
やはりタクマ様は犯人ではありません。
「いえ。私には方法はわかりませんが、どうにかして開けた様です」
「………益々、俺の犯行だと思われてるよな」
私の返答にタクマ様は驚き、そして寂しそうな顔をされました。
いけません。私がここへ来る理由は、疑いを晴らす為でも犯人探しのためでもありません。
タクマ様の支えになるためです!
「そう言えば、剣鬼様は・・・」
人の秘密を漏らすのは褒められたことではありません。
ですが、お許しください。
私は剣鬼様の話を出来る限り、面白おかしくタクマ様に話しました。
良かった…笑っていただけました。
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