今にも消えてしまいそうな、そんな雰囲気が好きだった。
誰も寄せ付けず、心の表面にすら触れる事を許さない。
そんな手前の歳相応な表情を、言動を見れるのは俺だけで、俺だけが手前にとっての特別で。
俺だけを特別にしてて、俺だけに見せる手前が好きだった。
なのに…、なのに何だその巫山戯た面は。俺に見せたこと無いような面でへらへら笑いやがって。
死ぬ時は一人で死にたいななんて、そんな事を云ってたくせに今更心中がしたいなんて云い始めやがって。
俺と同じ場所に居たくせに、そっちに行って。過去から目を背けるのをやめて。
俺以外のやつにそんな、そんな顔すンよ。俺以外を、特別にするんじゃねぇよ。
嗚呼、特別だなんて思ってたのは、俺だけか。
人間に成りたがる君が好きだった。
狂犬の様で、煽られれば直ぐに噛み付いて、そのくせ仲間想いで。死んだ仲間を、部下を今も一人残らず覚えていて。
隣にいる私には目もくれず、真面目に資料なんかを見つめて働いてる君を、少し揶揄えば君の意識は直ぐこっちに向いて。君の頭の中は私が口を開くだけですぐいっぱいになる。
ほら、私が少し揶揄う様に愛を囁いてみただけで、顔を真っ赤にして。
君も私も、互いが特別でしょう?
でも、そっか。君は私が居なくたって大丈夫なんだね。
私が居ない間に幹部なんかになって、部下が沢山できて。髪が伸びて。知らない服を着て。知らない香りを纏って。
いつの間にか全然知らない人になって。
嗚呼、互いが特別だなんて、そんなこと思ってたのは私だけか。
ああ。だから、だから君が嫌いだ
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