それから数週間が経った。
照も俺も何もなかったかのように過ごした。
照はあの夜のことを特に聞いてこなかったし、俺自身も今までのことや照への想いを考えないようにしていた。
だけど、寝る前に照を思い出しては身体が疼いた。
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ある冬の夜、仕事終わりにメンバー数人と飲みに行った帰り道。
いつの間にか、照と二人だけになっていた。
「……寒くね?」
「まあ、冬だしな」
そう言いながら、照は無造作にポケットに手を突っ込む。
手袋もしていないその指先が、冷え切っているのがわかった。
(俺が、手を温めてやることができたら)
そんなことを思ってしまう自分が、どうしようもなく惨めだった。
駅までの道は、夜の静けさに包まれていた。
いつもなら賑やかに話すのに、今日はなぜか言葉が少ない。
照の横顔を盗み見る。
コートの襟を立てて、冷たい空気を吸い込みながら歩くその姿は、どこか遠い。
(隣にいるのに、距離がある気がするのは、俺だけなんだろうな)
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