仄暗い人気も少ない、車通りも少ない通りを自転車から降りて弾きながら歩いていると帰り際いきいた友人の話を思い出してしまう。
信号機の発信音が何とも言えない雰囲気を醸し出している
雨が止んだ後特有の匂いと生暖かさを感じる水溜りが街灯を反射して火の玉や亡霊の体に一部と一瞬勘違いしてはもう一度振り返りただの錯覚だと確認しては一息ため息を零す。
「あんな幼稚な話を真面目に受けるなんて、まだまだ幼稚だな。」
心の中ではまだ怖がっている自分がいるが、うわべっつらでも強がって何とか気を紛らわしていると不意に何者かに左肩をポンポンと軽く打たれる感覚がした。
タイミングがタイミングなので思わず僕は仰天して「うわぁ」と情けない声を出してしまう
「これ、落としましたよ。」
そう言って彼が持っていたのは確かに僕が今日使った僕の名前が書いてある青いハンカチだった。
知らず知らずに言葉がつかえながらも拾ってくれた事実に関しては感謝するすると途端に耳が赤くなるのを感じた。
若く大学生ほどのブランド男(これからは男と呼ぶ事にする)はどういたしましてと言わんばかりににこりと笑みを浮かべれば僕の隣で歩行者用の信号機が青になるのを律儀に待っている。
確かにカバンの内ポケットに入れたはずなのになぁ。どこで落としちゃったんだろうなぁ。そろそろ鞄も替え時かなぁ。なんてぼやっとした頭で考えていると男は、またいきなり「ねぇ。」と僕に話しかけてきた。
今度は少し冷静になって「はい。」と返事をしながらゆっくり彼の方を見ようと振り向くといきなり左肩に手をそっと置かれて優しく掴まれる。
僕は困惑して思わず顔から火が出そうなほど頬を赤くする感覚を覚えた。
「君、今にも倒れそうな顔をしているが大丈夫かい?」
僕は重ねて驚いた。
今日だけで2回も言われるなんて。
だがそれ以上に無礼だなと感じてしまった。
「そうだよ。よかったらうちに来ないかい?
暖かい茶の湯や最近買った美味しいクッキーを出してあげようね。」
僕は初めはいいえと返答してやるつもりだった。
…だったのに、目を合わせさあ言うぞと思い口を開くと出た言葉は「はい」だった。
長く伸び、白く細い手を差し出されると手をとって自転車の籠の中にいれた物をほっぽってそのままついて行ってしまった。
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