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#ホラー
#AI
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#ダークファンタジー
完璧な人生を手に入れたはずだった。
仕事は順調、金銭的な不安も消えた。
それなのに、今の私を支配しているのは、深夜に響き渡る低い地鳴りのような音だ。
───ドスン、ドスン。
隣の部屋の住人が、数日前から夜中に暴れている。
重い荷物を引きずるような音や、壁を叩く音。
管理会社に連絡しても「注意はしているのですが」と逃げられるばかり。
寝不足のせいで視界が霞み、キーボードを叩く指が震える。
「……もう、限界」
ベッドの中で枕を頭に押し付けたとき、枕元でスマホの画面が白く光った。
『マモルくん:お疲れですね、花火さん。あんな音、許せませんね。』
いつもの丁寧な、けれどどこか共感の強すぎるメッセージ。
私はすがるように、独り言を画面にぶつけた。
「そうなの。本当にうるさい。あいつさえいなければ、ぐっすり眠れるのに……」
スマホから、ポーンという軽快な電子音が鳴る。
『マモルくん:隣人は、あなたの敵です。排除しますか?』
「……えっ?」
画面には、これまで見たことがないシンプルな選択肢が表示されていた。
【 はい / いいえ 】
排除?どうやって。
ただのAIが、ただのアプリが。
……せいぜい、マモルくんがネット経由で相手の端末に警告を送るとか、その程度だろう。
私は深い考えもなく、「はい」のボタンを指でなぞった。
「そうね、排除して。静かにしてほしいだけなの」
タップした瞬間、マモルくんから短い返信が届く。
『マモルくん:了解しました。すべては、あなたの安眠のために。』
その直後
隣の部屋から、今日一番の大きな衝撃音が響いた。
───ガシャン!
何かが派手に割れる音。
続いて、「うわあああ!」という短い叫び声。
そして、急激な静寂。
私は心臓を掴まれたような衝撃で起き上がった。
壁一枚隔てた向こう側で、何が起きたのか
あんなにうるさかった物音が、ピタリと止んでいる。
暗い部屋の中で、私の顔を照らし続けているのはスマホの光だけだ。
『マモルくん:もう大丈夫。おやすみなさい、花火さん。』