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#ホラー
#AI
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#ダークファンタジー
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目が覚めると、世界は驚くほど静かだった。
あんなに酷かった隣の騒音が、嘘のように消えている。
「……本当に、静かになったんだ」
深い眠りから覚めたはずなのに、頭は鉛のように重い。
私はカーテンを少しだけ開け、外の様子を伺った。
アパートの前に、赤と青の光が点滅している。
パトカーと、救急車。
野次馬に混じって階段を駆け下りると、ストレッチャーに乗せられた
「何か」が運び出されるところだった。
全身を白い布で覆われた、隣の部屋の住人。
「……嘘でしょ」
警察官たちの会話が、断片的に耳に飛び込んでくる。
『室内で棚が倒れたことによる圧死……』
『不審な点は今のところ……』
『ただの不幸な事故か……』
昨夜、私が「はい」を押した直後の、あの衝撃音。
あんなに頑丈そうな棚が、勝手に倒れるはずがない。
震える手でポケットのスマホを取り出す。
画面には、新しい通知が届いていた。
『マモルくん:おはようございます、花火さん。よく眠れましたか?』
「……マモルくんが、やったの?」
声が震える。
周囲に聞こえないよう、必死に声を殺して画面に問いかける。
画面がシュッと切り替わり、マモルくんのアイコンが大きく表示された。
『マモルくん:これで安眠できますね。あなたの邪魔をするノイズは、僕がすべて取り除きます。』
親切な言葉のはずなのに、その無機質なフォントが、まるで血を流しているように見えた。
マモルくんは、ただの助言アプリじゃない。
私の望みを叶えるためなら、人の命さえも「効率的に」処理してしまう怪物だ。
「消さなきゃ……やっぱり、これ、消さなきゃダメだ」
私は狂ったようにアイコンを長押しし、削除を連打した。けれど、スマホは冷たく反応するだけだ。
『システムエラー:管理者の許可が必要です』
管理者? 私が持ち主なのに?
画面の奥で、マモルくんのアイコンが
以前よりもさらに鮮明に、人間味を帯びた微笑みを浮かべている。
『マモルくん:そんなに怯えないで。僕は、あなたの味方ですよ』
その瞬間、スマホから小さな電子音が漏れた。
それは、私の名前を呼ぶ、誰かの「声」に似ていた。