まる子たちの住む静岡県の清水市では、 梅雨を主張するように、雨がこれでもかと降っていた。何しろもう6月だ。先週から降り出したそれは止むことを知らず、グラウンドには大きな水たまりができている。お陰で誰もが外で遊べずにいた。当然、遊び盛りな子ども達にとっては面白くないだろう。
「あーあー。 こうも雨が続くなんて、全く ついてないぜ。」
はまじを始めとした其々が、不満を漏らす。
「また雨かよー、俺サッカーしたいよ。」
「えー、増やし鬼だろ!?」
教室では既に、関口を中心とした男子達がほうきと雑巾を出し始めていた。野球の準備だろう。次第に僕も、俺もと人数が集まり、野球をする為の位置についた時だった。
「みなさーん!次の授業は、健康診断です!!ズバリ、早く廊下に並ぶでしょう!」
丸尾くんだ。
健康診断ならしょうがないと、道具をしまい、並び始める。声がけの影響か、廊下にはぽつぽつと列ができていた。ふと、まる子がたまえに声をかける。
「健康診断なんて忘れてたよあたしゃ。こりゃ授業が潰れて万々歳だね。」
この様な考えは珍しくないだろう。
「確かに、ちょっと嬉しいよね。」
と、笑いながらたまえと二人も、廊下に歩いて言った。
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クラスごとに男女で分かれ、保健室へと移動する。健康診断では、目や歯、耳などを始めとし、心エコーや心電図など。多くの場所を検査する為、時間がかかるからだろう。保健室の前には、行列ができていた。
「うわ、すげぇ列だな杉山。」
大野が辺りを見回すと、杉山も同じようにして驚いた。
「こりゃあ、相当待つぜ……。」
小声で話しでもしながら、気楽に待つかという杉山の提案に、大野も納得したようにして二人座る。話はサッカーから世間話へとうつり、結局はクラスの話で落ち着いた。
「なあ大野。お前、レクの案 何か思いついたか?」
杉山の問いに、大野は少し考えてから答えた。
「いや、今の所は何も。強いていうなら…ドッジボールとか、鬼ごっこ?」
「やっぱそうだよなー、俺も一緒。」
大野の意見に同意を見せる杉山。 気がつくと、次は自分らの番となっていた。
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「じゃあ次は背中の音を聴くから、後ろ向いてね。」
聴診器を構えた、髭面の優しそうなおじさん。年は40〜50歳位だろうかと、勝手な予想をしてみる。背中に聴診器が当たること、数秒。はい、終わりという声に、ありがとうございましたと返し、大野は心エコーの検査へと向かう。
一方で、おじさんが大野の背中の音を聴いた時。なにやら神妙な面持ちをしていたことは、本人以外に知る由もなかった。
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