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第9話 帰りたい

「――やだ」

夕子の一大事に対し、司郎の言葉はあまりに軽く響いた。

「や、やだってあんた……今の状況……!」

「わかってるよ? でもさぁ、今教えたら綾菜一人で飛び出すだろ。結構危ないと思うんだよなー、一人で行くには」

遮った司郎は、へらっとしたままで言葉もそうきついわけではないのに――有無を言わさぬ凄みがあった。

「っ」

一瞬、その雰囲気の変化に呑まれそうになった綾菜だったが、すぐに険しい顔つきで司郎を睨む。

「だからって……夕子に何かあったらどうすんの!?」

「鈴野待って、落ち着いて」

声を荒げる綾菜と、変わらず笑顔のままの司郎の間に入る敦。

遮られて言葉を収めた綾菜の代わりに、司郎が続ける。

「それにさ、その調子だと旭屋さんに会ったら、そうやって頭ごなしにキレるんじゃねーかな?」

「そ、んなこと……!」

今度こそ、綾菜はそれ以上言葉を返せな*********************

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