テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最終話です!最後のちょっとおまけエピソードもあります!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
それから数日後。
また、怪盗レトルトからの予告状が届いた。
封筒を受け取った瞬間、キヨの指先はわずかに震えた。
以前なら湧き上がっていた闘志は、今は胸の奥で静かに揺れているだけだ。
仲間たちはいつも通り慌ただしく対策を練る。
トラップ、警備、逃走経路の遮断。
だが――
今回のキヨは少し違った。
何かを秘めたその顔。
覚悟とも、諦めともつかない、静かな決意が宿っていた。
追うべき相手。
捕まえるべき怪盗。
許すべきでない犯罪者。
――それなのに。
あの夜、鉄格子越しに感じた体温。
あの目に潜んだ孤独。
あの声に滲んでいた、確かな痛み。
キヨは気づいてしまっていた。
自分が今、怪盗レトルトではなくその中の“人間”を見ていることに。
「次こそ捕まえる」
そう言い聞かせるように呟く。
だがその言葉は、どこか祈りに似ていた。
仲間の探偵たちが、遠くでレトルトを追う声が響いている。
無線の怒号、足音、金属がぶつかる音。
街全体が騒がしい。
――けれど。
キヨは走らなかった。
ビルの屋上。
夜風が強く吹きつけ、ネクタイの端を揺らす。
眼下には光の海。
ここだけが、まるで世界から切り離されたように静かだった。
キヨはフェンスに手を置き、空を見上げる。
自分の推理が正しければ。
いや――間違いなくレトルトはここに来る。
何度も何度も、レトルトの癖を洗い出した。
逃走経路、着地点、間の取り方。
それらを繋げて導いた、たった一つの結論。
“最後に降り立つ場所は、ここだ”
心臓が静かに高鳴る。
恐怖ではない。
期待でもない。
ただ――確信。
「来いよ….レトルト」
小さく呟いた声は、夜風に溶けた。
その時。
背後で、風とは違う気配が揺れた。
革靴がコンクリートに触れる、軽い音。
まるで羽が舞い降りるような、優雅な着地。
キヨは振り返らない。
振り返らなくても、分かる。
『こんばんは。キヨくん』
楽しそうな声。
懐かしいほど耳に残る声。
『やっぱキヨくん、すごいね〜!
ほんまに俺のこと、全部分かってるやん』
その声は軽い。
けれど、どこか愛おしむような響きを帯びていた。
キヨはゆっくりと振り返る。
月光の下。
白い仮面。
黒いマント。
そして、その奥で確かに自分だけを見つめる瞳。
二人の距離は、数メートル。
追う者と追われる者。
正義と悪。
探偵と怪盗。
――なのに。
今、この屋上にあるのは、
ただ二人だけの世界だった。
「……今度こそ終わりにするぞ、レトルト」
キヨの声は震えていない。
レトルトは、ふっと微笑む。
『終わり? それは“捕まえる”って意味?』
キヨはまっすぐにレトルトを見た。
迷いのない、澄んだ目で。
「いや….俺、お前を追うのやめようと思う」
一瞬、風の音だけが屋上を満たした。
『……え?』
レトルトの声が、かすかに揺れた。
今までどんな罠にかかっても、
どれだけの数の銃口を向けられても、
どんな窮地に立たされても。
一度も崩れなかった余裕。
一度も乱れなかった笑み。
――それが、今。
確かに揺らいだ。
『なん….で?』
仮面の奥の目が、細くなる。
疑いでもなく、怒りでもなく。
まるで“捨てられるかもしれない子ども”のような、不安。
キヨはゆっくり息を吸った。
「お前が盗んできたものの意味を知った。
返していたことも。
…お前の過去も分かった」
レトルトは黙ったまま、キヨを見つめる。
「俺は“悪を捕まえる正義”を信じてた。 でも、お前は単純な悪じゃなかった。お前のしてきた事を許すつもりはない。でも、俺はもっと深い所に渦巻く本当の悪を捕まえたい。 」
その言葉は、静かな刃だった。
レトルトの指先が、わずかに震える。
それを隠すように、マントの裾をぎゅっと握った。
『……じゃあ、俺の事はもう必要ないってこと?』
声は柔らかい。
でも、その奥に潜むのは、底知れない執着。
キヨは首を振る。
「違う!! 必要とか不要とか、そんな話じゃない!!」
一歩、前に出る。
二人の距離が縮まる。
「追うことでしか、お前と向き合えなかった。
でも、これからは違う方法でお前と向き合いたいんだ」
レトルトの目が、大きく見開かれる。
『……キヨくん、それって…』
「探偵の俺じゃなくて
怪盗のレトルトじゃなくて
本当のお前を捕まえたい。」
キヨの声は静かだった。
けれど、その言葉には決して揺らがない熱があった。
その一言は深くレトルトの胸を撃ち抜いた。
『……なにそれ』
笑っている。
でも、その声は震えていた。
キヨは一歩、さらに近づく。
もう逃げ道のない距離。
「捕まえるなら――怪盗じゃなくて、お前自身だ」
レトルトはふっと息を漏らす。
『……俺さ、ずっと思ってた。
キヨくんになら捕まってもいいかなって』
風が吹く。
夜の匂いが二人の間をすり抜ける。
『でも….』
レトルトは笑った。
いつもの余裕の笑みじゃない。
どこか泣きそうな、優しい笑み。
『俺を捕まえるってことは、
俺の過去も、今も、俺の執着も、全部背負うってことやで?』
キヨは即答した。
「分かってる」
その言葉に、レトルトの瞳が揺れた。
まるで長い孤独の旅路が、
ようやく終わりを見つけたみたいに。
『……ほんま、唆る探偵やなぁ』
レトルトは一歩前へ出る。
額が触れそうな距離。
そしてキヨはレトルトの仮面にそっと手を添えた。
いままで一度も外したことのない仮面を一一
優しく外した。
月の光に照らされたその顔に、キヨは息を呑んだ。
キラキラと透ける金髪。
釣り上がった切れ長の目元。
そして、どこか儚さを宿した微笑み。
『……これが、本当の俺』
レトルトは優しく微笑む。
キヨは黙ってその顔を見つめる。
追い続けてきた影。
掴めない背中。
その正体が、今、確かに目の前にいる。
『がっかり…した?』
レトルトが不安そうに小さく尋ねる。
キヨは首を横に振った。
「……綺麗だと思った」
それは嘘のない声だった。
「お前、仮面してる時は自信満々のくせに外すと急に弱気になるじゃん」
キヨはニヤッと笑ってレトルトの頬に手を添えた。
レトルトの瞳が、わずかに潤む。
そしえ少し困ったように笑った。
「やっと、捕まえた」
レトルトはそっと目を閉じ、額をキヨの肩に預けた。
『ふふ……捕まっちゃった』
その声は、夜風に優しく溶けていった。
追う者と逃げる者。
正義と正義。
痛みと痛み。
怪盗は自由を盗み、探偵は真実を追う。
その終着点は、最初から決まっていたのかもしれない。
終わり
《その後のお話》
「ただいまぁ。」
キヨの疲れた声が部屋に小さく響く。
『キヨくん!おかえり!!』
レトルトは嬉しそうにソファから飛び降り、勢いのままキヨに抱きついた。
「ちょ…レトさん、重いって」
そう言いながらも、キヨの腕は自然とレトルトの背に回る。
レトルトはキヨの胸に頬を押し当て、小さく笑った。
『今日もお疲れ様。無事に帰ってきてくれてよかったぁ』
レトルトはそう言いながら、キヨの首に腕を絡めて離れない。
疲れ切った心に、甘い蜜がじんわり染みていく。
あの屋上での一件から数ヶ月。
キヨとレトルトは町外れの小さな家で一緒に暮らしていた。
窓の外には雑木林が揺れ、遠くに夜景がちらりと見える。
静かで、穏やかで――二人だけの世界。
『今追ってる事件、どんな感じなん? なんか手がかりあった?』
レトルトはソファに腰を下ろしたまま、少し心配そうに尋ねる。
キヨは手に持った書類を置き、深く息を吐いた。
ここ数日、事件調査のために家を空けていた。久しぶりに戻った家の中で、レトルトの顔を見ると少しほっとする自分がいた。
「……正直、まだ手がかりはほとんどない」
キヨの声には疲れが滲んでいた。
「情報は断片的で、国が闇に葬った事件だから、隠された真実を探すのが難しくて…」
『そっかぁ……でも、キヨくんなら大丈夫!!俺を捕まえた唯一の探偵やもん!!』
レトルトは誇らしく笑って言ったが 少しだけ不安げだった。
『でも….無理しすぎないでね。ちょっと心配やねん』
その言葉に、キヨは小さく笑った。
そして安心させる様に優しくレトルトの頭を撫でた。
「そういえば…レトさん、今日も派手に飛び回ってたなぁ」
キヨは手元の資料を片付けながら話す。
今、キヨが追う相手はレトルトではない。
それでも心のどこかで、あの高笑いと仮面の影を思い出してしまう自分がいた。
『今日も怪盗レトルト様の大勝利やったで!あんな簡単なトラップに俺が引っかかるわけないやん。あんなん盗んで下さいって言ってる様なもんやで』
レトルトは自慢げに話しながらひょいとキヨの肩に腕をかけた。
『それよりさぁ。キヨくんこっち向いてよー』
キヨはつい、手を止めて視線を向ける。
そこには、いたずらっぽく笑うレトルト。
『ここではただのレトルトなんやで?だから、もっとそばにきてよ』
レトルトは静かに、でも真っ直ぐにキヨの目を見つめた。
その視線に、キヨの胸はぎゅっと高鳴る。
「…うん////」
キヨは少し照れくさそうに視線を逸らしながらレトルトの肩に手を回した。
レトルトは小さく笑った。
『ふふ、やっぱキヨくん可愛い〜』
その笑みに、キヨの頬は自然と赤くなる。
体の奥まで温かさが広がる感覚。
胸の奥で、ぐっと何かが弾けたような気がした。
ぶつかる視線で一気に距離が縮まった。
息が重なり、心臓の鼓動が互いに伝わる。
そして――
唇が触れ合った。
柔らかく、確かに、そして優しく。
キヨは唇をほんの少し離して、息を整える。
頬は真っ赤に染まり、胸の奥はざわざわと高鳴っていた。
「……レトさん、あの…今日…したい///」
声は小さいが意志ははっきりしていた。
その瞳は、普段の探偵の鋭さを忘れ、ただレトルトを求めている瞳だった。
レトルトはその表情を見逃さない。
ニヤリと笑い、そっと手を伸ばす。
『ふふ、いっぱい気持ちよくしてあげる』
キヨは少しもじもじしながらも、手を差し伸べ、自然とレトルトに体を寄せた。
『ねぇ、キヨくん。今夜は優しくされたい?それとも酷くされたい?』
その声音にキヨはゾクリと震える。
「……酷く…して…////」
レトルトはキヨを見つめながら、ニヤリと笑った。
『カニさんたちー!出ておいでー!』
指をパチンと鳴らすと、途端にどこからともなく、ガチャガチャと音を立ててブリキのカニのおもちゃが現れた。
床のあちこちをちょこちょこと歩き回り、金属の足が光を反射してキラキラと光る。
「な、なにこれ…!」
キヨは目を丸くして後ずさる。
そして、カニたちが一斉にぷしゅーと甘い香りの煙を吐いた。
キヨは思わず後ずさり、目を見開く。
「な、なに…これ!?」
驚きと困惑が入り混じった声。
レトルトは耳元でひそやかに囁いた。
『これねぇ、キヨくんをとーってもエッチな気分にさせちゃう煙やで』
キヨは頬を真っ赤にしながら
「レトさんのバカー!!」
と力無くレトルトを叩いた。
レトルトはその叩きを楽しそうに受け止め、
『今夜は寝かせてあげられへんかもなぁ〜』
とニヤリと笑う。
そして軽くキヨを抱き上げると、そのまま寝室へ向かった。
「…もう、あんまり好き勝手するなよ」
小さな声で抗議するキヨに、レトルトは低く優しい声で答えた。
『ん〜、どうかなぁ。キヨくんって可愛くて壊しちゃいたくなるんだもん』
「や、やめろーーーー!!!」
レトルトはジタバタと抵抗するキヨを抱き抱えて ニヤリと怪しく笑いながら
静かに寝室の扉を閉めた。
終わり
最後まで読んで下さってありがとうございました!初のカップリング「レトキヨ」でしたが
いかがだったでしょうか?
楽しんで頂けてたら嬉しいです🥹💗
書くのに時間がかかるのですが、
レトキヨ・キヨレト どちらのカップリングでも大丈夫なのでリクエストなどあれば是非教えてくださいヽ(*^ω^*)ノ
最後までお付き合いありがとうございました!
魑魅魍魎
コメント
11件
はじめまして! シリーズ最終 ありがとうございました。 私もTOP4やレトキヨ (リバ)も好き派ないちファン として観させて頂きました。 メチャクチャ物語を纏めるの 上手すぎて涙モンでした。
色んな意味で泣きそう…私のお友達はky左が地雷の人多いからこれでやっとおすすめできる!!!!!! 魑魅魍魎さんの文章すっごいオシャレで儚くてストーリーも普通に面白くて大好き!!!!!!!! 前も言った気がしますがFA描きます…!!
ぐはぁぁ……_(┐「ε:)_💕