大和、まどか、美和、たつや、雲雀は新学期のために大型ショッピングモールとデパートが併設されている所へ向かった。花梨も行く予定だったが風邪を引いて寝込んでいる。雲雀がショッピングモールへ行ったことが無いため提案したのだ。休日なため流石と言うべきか、人が多い。
「雲雀、たつやから離れんなよ」
たつやは爽やかに笑い雲雀の手を握る。
「離れたらダメなんだって」
雲雀はコクリと頷き、先へと進んでいく。デパートへ着くとまどかは一直線にハイブランドの店が並ぶ通りへ歩いていく。店の中へ5人は入り各々見て回っていた。
「俺、この時計買うわ」
大和はそう言ってショーケースに入った時計を指差す。値段を見ると3000万円程する代物で、店員はまだ学生である大和をじっと見つめる。一方で、美和は手持ちが少ないからと前置きし、1つの財布を手に取った。
「お店に入って何も買わないのは失礼だしお財布を購入するわ」
こちらの財布も約30万程するため店員の視線を集める。大和はそのくらい俺が買ってやるよと言い美和の手から財布を取った。
「ありがとう、お兄様」
服の裾が掴まれたような気がした美和はふと後ろを向く。すると美和を見つめる雲雀がいた。付き合いの長い幼なじみだからこのような芸当ができるのだろう。
「皇女ちゃんは何色にする?」
美和がさっきまでいた財布コーナーへ行くと雲雀に尋ねた。静かに指を指した雲雀の後ろから手が伸びてくる。
「了解、買ってくるね」
そういったのはたつやだった。大和くんが妹の物買ってるのに俺は彼女のもの買わないのはダサすぎだろと言い、歩いていく。
「あの、失礼ですがお客様…」
そう言って店員が歩いてきた。初めて行く店ではいつも言われる。きっとまた同じだろう。そう察したまどかは店員へ優雅に話しかける。
「この店の責任者を読んでくださるかしら」
しばらくすると責任者が歩いてくる。恐らく店員が経緯を伝えたのだろう。学生が店の中でも高いものを購入すると言い張り、話しかけると責任者を呼べと言われた。そう伝わっていたようだ。まどかは歩いてきた責任者を背にバックが沢山並ぶ棚の前まで歩き口を開く。
「ここからここまで全て1つずつ購入するわ。」
一緒に来ていた4人は爆発寸前のまどかの表情を見てため息をつく。
「ところでこの店はどこの系列かしら?」
どうしてそんなことを聞くのだろうと言わんばかりの表情で答えた。
「伊集院グループですが、それがどうかされましたか?」
ドヤ顔をしたかのように答える責任者を見て店中に笑い声が響く。
「もうダメだ、笑いこらえれねぇよ」
大和が大口を開けて笑うと美和がくすっと笑い止めに入る。
「お兄様、失礼ですよ…」
雲雀もくすっと笑ってたつやの手を握る。するとそれまで笑っていたたつやもまどかへ話しかける。
「お姉様、そろそろ帰らないとお爺様が心配されるかもしれないですよ」
ため息をついたまどかは振り向くと責任者の元へ歩いていく。
「あなた、伊集院の現当主の孫の名前知ってまして?」
もちろん知ってますともと言い名前をあげていく。
「まどか様とたつや様だろう。お顔は拝見したことないが御二方とも全国を制した素晴らしい方だと存じております」
得意げに話す責任者を見て大和はまた吹き出す。勿論淡々と話しているまどかも含め皆が笑いをこらえる事態となった。まどかは相手を圧倒する笑顔でたつやを指差しながら言う。
「あなた、知らないの?伊集院たつやってあれだけど。偶然にもわたくしも卓球で全国優勝してますわよ?分かったらさっさとわたくしたちの家へ荷物を送ってくださる?」
目の前にいる指をさされた男性客が伊集院家の人間だということを信じられず、まどかを睨みつける。しかし相手は客だからと従業員になだめられて画像検索をかけた。それはそれは驚いたことだろう。たつやだけでなく目の前にいるまどかも一緒に来ていた大和たちも皆写真の中に写っているのだから。慌てた責任者は勢いよく頭を下げる。
「申し訳ございませんでした。ご無礼をどうかお許しください!ほらお前たち速やかにお会計をして頂けるように準備しろ」
今更すぎる謝罪にまどかは冷たい視線を向ける。会計が終わり従業員一同が店の前まで見送りに歩いてくる。ありがとうと一言言うとまどかは責任者を指さした。
「あなた、明日から来なくていいわ。クビよ。お客様に無礼を働く従業員なんて伊集院には要らないわ」
そう言い放つと歩いていくまどかの背を見送りながら責任者は座り込んだ。
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