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買い物も終わり2年生になったまどかは辺りを見回す。どこを見ても入学式を終えた新入生でいっぱいだ。新入生をターゲットに今年も部活動勧誘の声が校内に響く。そんな中まどかは卓球部のいる場所まで一直線に歩いていった。

「わたくしは卓球部を正式に退部します」

バスケに本気で向き合いたいからと前置きをして卓球部現部長へ告げた。しかし返答はまどかの思っていたものとは違った。引き止められるわけでもなく、すんなり辞めさせてくれることもなかった。部員が頭を下げ、試合にだけでも出てくださいと懇願されたのだ。まどかは試合だけならと了承し、走ってバスケ部のいる体育館へ行く。


一方、バスケ部では自己紹介が始まっていた。優馬はコーチから自己紹介するぞと前置きをし口を開く。

「コーチの五条優馬、日本代表のコーチも兼任しているため練習見るのは主にこいつになる」

そう言って優馬は瑠奈を指さした。瑠奈は笑顔で優馬の指を払い除け1歩前へ出る。

「同じくコーチの西園寺瑠奈、元プロテニスで選手をしていたの。あとはこの人達と幼なじみってことくらいかしら?」

瑠奈は優馬と大和の方を見る。大和はまどかが来ないことを気にしてドアの方向を見ていたが人が入ってくる気配はない。新学年初日から遅刻かよと言わんばかりの顔でため息をつき、話し始める。

「主将の成瀬大和です、よろしく。」

大和はこれ以上ない簡潔な自己紹介をするとまたドアの方向を向く。新入生が挨拶をしようとした瞬間勢いよくドアが開いた。

「遅れてすみません」

まどかが息を切らして入ってきた。まどかの全力疾走を見た陸上部が今もまどかを探し回っているのだとか。静まり返った空気を壊したのはまどかだった。

「入学おめでとう、私のことはまどか先輩とでも呼んで」

苗字は内緒よと続けるまどかを見て新入生の数名がざわざわする。次は新入生挨拶だぞと優馬は手を叩き、1人の1年生が前に出る。

「藤田斗真です。U20の兄貴や伝説神童のバケモノを超えるためこの高校へ来ました。」

神童のバケモノという言葉が出てくるとは思っていなかった大和やまどかはビクッと肩を揺らした。そんなことに気づいていない残りの2人が自己紹介を始めた。

「神童学園出身の如月和真です。大和先輩とバスケしたくてこの高校入りました」

「和真の双子の兄、篤人です。理由は和真と同じです」

自己紹介が終わり練習始めるぞという優馬の掛け声でランニングから始まる。整列をすると1番前に並んだ大和を見て、如月兄弟は目を輝かせる。

「今日大和先輩のペースで走るんすか?楽しみっす!」

2人で声を揃えている後ろで斗真は違和感を持つ。大和の横にもう1人マネージャーだと思っていたまどかが立っているからだ。星蘭高校のランニングは2列で前からペースの早い順に構成されると説明があった。あまりの違和感に斗真は大和へ声をかける。

「成瀬先輩、まどか先輩はマネージャーじゃないんですか?」

斗真の質問を聞き、如月兄弟は大和の横を見る。疑問を持つ新入生を見て優馬はまどかにひそひそと耳打ちする。まどかが頷くと優馬が口を開いた。

「まどかは男子バスケットボール部の選手だよ。男子が女子のチームに入ることは出来ないけど逆はできること知ってるだろ?」

うちは人数が少ないからと前置きをすると3人は納得していた。試合になれば実力もわかってしまうためその場凌ぎにしかならないがまどかもそれを了承したようだった。


ランニングが終わると、大和と同じペースで走りきったまどかに1年生が駆け寄ってきた。

「先輩走るの早いっすね」

篤人の後ろで、バスケ部とは思えないと頷きながら言っている2人もいる。どう返すのが正解か迷っているまどかに大和は助け舟を出した。

「こいつ昔陸上してたんだよ。こいつよりすごいやつらあっちにいるけど行かなくていいのか?」

五大家門の祖父を持ちながら実力も兼ね備えている大和先輩のほうが凄いっすと言いなかなか離れない双子へとどめの一言を言った。

「コーチ2人とも五大家門当主の孫で、日本代表のコーチと元最強のオールラウンダーだぞ」

大和の言葉を聞いた瞬間双子は2人の方へ走って行った。2人が離れたのを確認すると大和はまどかに意地悪そうに声をかける。

「伝説の神童のバケモノも神童の怪物も鬼姉も、中央伊集院家の孫もここにいるのにな」

やめなさいとまどかが大和の肩を叩く。いつかはバレるよねと寂しそうな顔をしているまどかの背中をトントンと叩く。

「大丈夫、その時は俺も一緒にいるから」

大和の言葉を聞きまどかは息を殺して涙を流した。まどかを抱きしめながらコーチと話している3人の姿を見て大和は呟く。

「こいつが1番すげぇ奴だよ」

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