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ゆんしょ
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本社への異動まで、あと一週間。
照は引き継ぎや打ち合わせで、帰りが遅くなる日が続いていた。
辰哉も分かっている。
忙しいだけ。
そう頭では理解していた。
でも。
心は簡単には納得してくれなかった。
────────
夜九時。
辰哉は自宅のソファに座り、スマホを見つめていた。
最後のメッセージは二時間前。
💛「今から会議入る。終わったら連絡する」
それきりだった。
💜「まだ終わらないのかな……」
心配になりながらも、何度も画面をつけては消す。
結局、その日は眠ってしまった。
翌朝。
スマホには午前一時過ぎの通知が残っていた。
💛「ごめん、終わったらそのまま寝落ちしてた」
辰哉は小さく笑う。
💜「ほんとに忙しいんだな」
返信を打とうとした、その時だった。
社内チャットの通知が入る。
「昨日の本社会議、お疲れさまでした!」
添付されていたのは集合写真。
照も写っていた。
その隣には、一人の女性社員。
肩が触れそうなくらい近い距離で並び、二人とも笑顔だった。
辰哉の指が止まる。
胸の奥がざわつく。
(……仕事だから)
そう言い聞かせる。
でも。
写真を閉じても、その光景だけが頭から離れなかった。
────────
昼休み。
照から電話がかかってきた。
💛「お昼食べた?」
いつもと変わらない声。
💜「うん」
💛「今日も帰り遅くなる」
💜「そっか」
💛「ごめんな」
💜「謝らなくていいよ」
会話は続く。
でも辰哉は、あの写真のことを聞けなかった。
聞けば、自分が疑っているみたいになる。
そんな自分が嫌だった。
────────
その日の夜。
照がようやく帰宅すると、辰哉からメッセージが届いていた。
💜「お疲れさま。ちゃんとご飯食べてね」
照は思わず笑う。
💛「食べる。辰哉も無理すんな」
それだけのやり取り。
でも。
照は何となく違和感を覚えていた。
(何かあった……?)
辰哉の返事が少しだけよそよそしい。
気のせいかもしれない。
そう思いながらも、胸に引っかかりが残る。
────────
翌日。
会社のロビー。
照が本社へ向かおうとした時だった。
昨日、写真に写っていた女性社員が声を掛けてきた。
「照さん!」
辰哉は少し離れた場所で、その様子を見ていた。
女性は照に資料を渡し、何か楽しそうに話している。
照も笑顔で返している。
それは仕事の会話。
そう分かっている。
それでも。
五年前、仕事が原因ですれ違った記憶が、胸の奥で静かによみがえる。
辰哉はその場を離れようとした。
その瞬間。
💛「辰哉!」
照が呼び止める。
辰哉は振り返る。
💛「今日の夜、少しだけ会えない?」
辰哉は一瞬だけ迷い、小さく笑った。
💜「……ごめん」
💜「今日は予定あるから」
それは、咄嗟についた嘘だった。
照は少しだけ寂しそうな顔をしたが、すぐに頷く。
💛「分かった」
その背中を見送りながら、辰哉は唇を噛む。
嘘なんてつきたくなかった。
でも今は。
少しだけ、一人になりたかった。
コメント
2件
辛… ほんと幸せになって、
うわ、めっちゃリアルなすれ違い……💦 写真一枚でここまで心がざわつく感じ、辰哉くんの視点が細かく描かれてて胸が痛い。仕事って分かってても“一人になりたい”って嘘ついちゃうの、わかるよなぁ。切ない回だった。続きどうなるのかめちゃくちゃ気になる!🔥