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~魔王城近辺~

 明日、新生”魔王”である未央と六魔将、及び配下の魔王軍で獣人の国に戦争を仕掛けることになった。


 まだ、戦争を仕掛けるまで時間がある。

 

 六魔将の一人であるサンドルはかつて自分が住んでいた住居に帰宅することにした。


 「500年ぶりの我が家か―――」

 「まだ家が存在しているのか分からんが面白そうだから見にいってみるか。」

 

 他の六魔将は、魔王アリスの時代から領地をもらっており、その領地の管理と運営をしている。


 サンドルだけは、管理運営が面倒という理由もあり領地を与えられることを拒否していた。


 サンドルにしてみればアリスの命以外に興味はなく、魔王に対する忠誠心など一欠片もなかったのである。

 

 しかし、流石に数々の武勲を挙げ、魔王軍に貢献をしていたサンドルに対して、褒美が一つもないのはアリスとしては許容できなかったため、魔王城の近辺に豪邸を貸し与えていたのである。


 サンドルは500年ぶりの我が家に帰ってきて、家のドアを開けた。


 500年ぶりだというのにそこはつい最近まで誰かが住んでいたような形跡があった。


 「ア”ァ”―――!?」


 サンドルがドアをバタンと閉め、辺りを見回していると一人の女の子が奥から現れた。


 「誰?」


 「お前こそ誰だ?」

 「ここは俺様の家のハズだが?」


 サンドルは容赦なく、その女の子に聞き返す。


 「えっ、もしかしてご主人様?」

 「お帰りになったんですね!」


 サンドルは目の前の少女が誰か分からずにいた。


 「もしかして覚えていらっしゃらないのですか?」

 「私です!貴方様に作られたゴーレムのベリルです。」


 「あ~、そういえば500年前に作成していたな!」

 「まだ動いていたのか―――!」

 「流石は俺様と言ったところか」


 自分の作成したゴーレムが未だに動きを止めていないことに自画自賛し、サンドルは上機嫌でいた。


 「確か、500年前はゴーレム作成に一番夢中になっていた時期で―――」

 「その時は機能の他に造形にもこだわっていたな。」


 ベリルは、見た目は10代の人間の娘のように見える。

 

 その容姿は端麗でどこぞの貴族の娘と言っても問題ない程だった。


 さらに凄いことにこのベリルはゴーレムでありながら、自分の意思を持っていたのである。

 

 伝説の怪物サンドルとは言え、自分の意思を持つゴーレムを作成するのには長い年月を要した。

 

 当時やっとの思いで完成したのがこのベリルであったのだ。

 

 しかし、サンドル自身、意思を持ったゴーレムを作成したことで満足しており、そのベリルの存在をすっかり忘れていたのであった。


 「私はこの500年間ずっとご主人様のお帰りを待っておりました。」


 「ずっとこの家を掃除したりしていたのか!」

 「ご苦労であった。」


 サンドルは忠実なベリルを褒める。

 サンドルは、敵に対しては極めて残酷で残忍な行為を平然と行うが、自身を慕う者や忠誠を尽くす者には優しい上司。

 

 それは自身がかつて鬼人族の村で虐げられてきた過去の体験によるものが大きかった。


 「俺様は久しぶりに我が家に帰ってきた!ベリルよ!今夜はうまい飯を作ってくれ!」

 「かしこまりましたご主人様」


こうしてサンドルは、500年ぶりの我が家で次の日を迎えた。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


~魔王城 魔王の間~


 獣人の国に戦争を仕掛ける当日未央と六魔将は魔王の間に集まっていた。


 「みんな集まったわね!」


 未央は六魔将が集まったことを確認した。


 魔王城の回りには魔王軍の六魔将以外の配下が戦争を今か今かと待ちわびている。


 「これから獣人の国”クロヴィス”まで転移を行い、戦争を仕掛けます。」


 リカントが六魔将全体の皆の指揮を執る。


 「あっ、そのことなんだけど!」


 未央がリカントの説明に割って入る。


 「未央様何でしょうか?」


 「流石に私と六魔将の全員と下の魔物の全員で行くのは、どうかと思うから獣人の国に行く人と魔王城に残る人に分けない?」


 クロヴィスの戦闘力がどれほど強いか未央は知らないが、どう考えても魔王と六魔将の全員で攻めたら死傷者が半端ないことになるだろうと予測しての提案だった。


 「確かに全員で攻めたら、この魔族領の防衛が手薄になります」


 「それを見越しての提案ですか!流石”未央様”!」


 リカントが未央に対してこれでもかと言う程の尊敬の眼差しを送る。


 う~んそんなに大したことは言ってつもりないだけどなぁ―――

 

 リカントちゃんはこの世界ではかなり強いらしいから、あんまり攻められるって発想がないのかも。


 未央の思惑とは少し異なるが、六魔将全員で攻める線はなくなりそうであった。


 「じゃあ申し訳ないんだけど!アドラメレクとハイロンそして、リカントちゃんはここに残って!」


 「えっ?」


 リカントは残ってと未央にお願いされて、キョトンとした顔になった。


 「私も未央様と一緒にクロヴィスに向かいますよ!」


 「う~ん気持ちはあり難いんだけど~。」


 何とか説得し、ごねるリカントは魔王城に残ることになった。


 あらかじめこの戦争で誰を連れていくかは、未央はアリスと決めていたのである。

 

 アドラメレクとハイロンは未央の魔王就任に否定的であり、下手をするとクロヴィスとの戦争中に反逆の可能性も捨てきれなかったため、魔王城に置いていくことにした。

 

 リカントが魔王城にいれば、仮に反逆したとしても何とかなるという計算の元だった。


 サンドルを連れていくのは、アリスからの提案。

 

 サンドルは自分の勝ちを完全に確信してから動き出す男だということをアリスは知っていたので、魔王城に戻ってすぐのこのタイミングでの反逆はないと踏んでいた。

 

 もし仮に裏切ったとしても、未央とエレナ、モレクの3人が相手の場合、サンドルは逆立ちしても勝てないし、エレナとモレクは絶対に裏切らない理由があるためクロヴィスに連れて行こうと未央と相談していた。

 

 二人の裏切れない理由はまた別の話になるのだが―――


 「チッ!俺様はエレナみたいなババアと一緒かよ―――」


 サンドルがエレナに向かって嫌味を言うと、エレナは怒ったようでサンドルの顎を掴む。


 「誰がババアですって!もう一度言ってご覧なさい~★」


 実際魔族は基本的に人間よりも遥かに長寿であり、放っておけば何千年も平気で生きる様な生物だった。


 エレナもその例に漏れず、長寿であったが、その美貌は10代の娘と言っても差し支えない程であり、絶世の美女であった。流石はサキュバスと言ったところである。


 「止めんか其方ら!」

 そう言って、制止したのは六魔将の一人モレクだった。


 う~ん大丈夫なのかな?こんな感じで・・・


 未央は六魔将の仲がいいのか悪いのか分からないフワフワした感じで戦争に向かうことに一抹の不安を抱くのであった。

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