テラーノベル
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とある日曜日に、たまには買い物でもしようと街を歩いていた。秋服を補充するつもりだが、持っている服が茶色やグレーばかりで、もう少しだけ綺麗めカジュアルって感じの服でも買おうかと思ったのだ。
その結果、思い切って、ブルーのスカートを買ってみた。少しだけ気持ちが明るくなった気がする。その他にも何着か服を買って、このまま帰るかお茶でもするかなどと考えながら歩いていた。
すると、どこかの劇団のビラを配っている子がいて思わず受け取ってしまった。観劇かぁ。全く縁のない世界。せっかくだからと歩きながらビラを隅々まで眺めた。
そして、見つけてしまった。
俳優の二番目に「白田裕二」とあった。単なる同姓同名かもしれない。でも気になった。モデル志望だった彼も今頃は二十代後半、俳優に転向していてもおかしくない。
私は気がつくと、ビラを配っていた若い子に飛び込みで観にいけるのか聞いていた。大歓迎ですと言われ、その三十分後には私は小さな劇場に入り、一番後ろの端に席を取った。
聞いたこともないタイトルの劇が始まった。SFのようだ。訳のわからない哲学的なものじゃなくてよかった。そこそこストーリーも楽しめている。小さい劇場で俳優の顔もよく見えた。
間違いなく彼だった。男っぽくなったな、でも昔のままイケメンだ。
私は彼のことをずっと観ていた。そして、劇が終わり、さっさと外に出た。素敵な夢を見た。そんな気持ちで家に帰った。
翌日、昨日買った青いスカートを履いて出社した。みんなが「いいじゃん」と言ってくれた。
遠くでこっそり「あの人いくつ?」という声が聞こえた。
「岡井さんまだ三十一だよ」と答える声まで聞こえた。そして驚いて息を呑む音。おい! いくつだと思ってたんだよ。
私は苦笑しながら席につき、仕事を始めるのだった。
さらにその翌日、昔のバイト先で仲良くしていた堀田ちゃんから久々に連絡がきた。例のレストラン時代の仲間で、今でも一、二年に一回は会って飲む仲だ。
「たまには連絡つく人だけでも集まって飲みません?」
一昨日、当時のバイト仲間の姿を見て、その直後に当時の仲間で集まるだなんて。こんな偶然ってあるもんなんだな。
彼が来るとは思っていなかったけど、私は行く事にした。青いスカートを履いていこうと考えていた。
「久しぶり〜!」
そんな言葉で溢れかえっていた。キッチンの人たちにも声がかかっていたようで二十人くらい集まっていた。
「岡井さーん」
「美里ちゃーん」
たくさんの当時の先輩後輩、同僚が寄ってきてくれた。
「みんな変わらないね」
二十代前半から三十歳そこそこで、そんなに変わるわけないか。何人かはたまに会ってもいたしね。
「美里ちゃん相変わらず綺麗だね」
「昔から美人さんだったもんね」
私は驚いてしまった。今の私が綺麗なんてわけがないと思った。確かにいつもより入念にメイクはしてきた。でも夫にさえ相手にされなかった女なんだよ。
とはいえ、お世辞だと思っていても、気持ちが華やぐのを感じた。確かに昔は美人だの言われて、それを「いえいえそんな」なんて答えながらも受け入れている自分がいたのを思い出した。それが、たった数年で地味なお局になるんだから人生って不思議。
「あっ、発起人登場〜!」
堀田ちゃんが声を上げた。入り口から入ってきたのは、白田くんだった。
「えっ、発起人?」
私は思わず堀田ちゃんに聞いた。
「そうなんです。たまにはどうかなって私とキッチンの村田さんに連絡が来て、それぞれ知ってる人に声をかけて、この人数になりました!」
「そうなんだ……」
「相変わらずカッコいいですよね。役者さんやってるらしいですよ」
うん。知ってる。
バイト同窓会はとても盛り上がった。みんな当時の懐かしい話ならいくらでも出てくるぞといった感じだった。
トイレに行った帰りの廊下で白田くんとすれ違いかけた。どんな顔をしたらいいのかわからないでいたら、彼の方から話しかけてきた。
「日曜日、舞台観にきてくれてましたよね」
「えっ、気づいてたの?」
「そりゃ、あんな狭い劇場だし。岡井さん昔と全然変わってなかったし」
「嘘! もうすっかりおばさんだよ。舞台観たのは偶然なの」
私は、いい歳して昔の知り合いの男の子を追いかけてきたとは絶対に思われたくなかった。事実なんだけどムキになりすぎたかな。逆に失礼だったかなと少し考えてしまった。
「その何か考え込んでる顔とか全然変わってない」
彼は笑いながら、一緒に席に戻って当然のように私の隣に座った。
「役者をやっているのね。面白かったよ」
「全然売れてないから、まだまだバイトがメインだよ」
私たちは最後のデートには触れずに、バイト時代の思い出話に花を咲かせた。
日暮ミミ♪
855
latte
732
#溺愛
星キラリ

3,683
楽地みどり
465
「あの頃は楽しかったなぁ」
「今は楽しくないの?」
「普通。としか言いようのない状態」
私は、当時の彼氏と結婚して離婚した話をした。なんの下心もなかった。でも聞いてほしかったのだ。私の選択ミスを、彼に。そして会社に出戻りしてお局街道を走り始めていることを面白おかしく話した。本当に面白い事に思えてきたから不思議。
私は今日のことも「楽しい夢の時間」として、思い出の引き出しにしまって生きていくのだろう。
コメント
1件
ああ〜もう、このエピソードめっちゃ沁みた…😭💕 青いスカート買って気分上げるところから、まさかの白田くん再会フラグ回収!「その何か考え込んでる顔とか全然変わってない」って台詞、優しすぎてキュンが止まらんかったよ…! 最後の「楽しい夢の時間」って締めくくりが切なくて、でもあったかくて、何度も読み返したくなる話だった🥺✨ 次も絶対読みます!!