冷たい水が全身を包み、意識が一瞬飛びかける。
だが、玲央はすぐに必死に水面へ浮かび上がった。
「っ……くそ、流れが……強い……!」
川の勢いは想像以上だった。
水流に流されながらも、玲央は必死に岩場に手を伸ばす。
だが、腕の負傷のせいで力が入らない。
(まずいねぇ……このままじゃ……。)
そんな玲央の姿を、崖の上から見下ろすスタンリー。
彼はライフルを構えたまま、冷静に狙いを定めていた。
「……さすがに、これで終わりか。」
だが、その時——
「——スタンリー!戻れ!」
無線機からゼノの鋭い声が響いた。
「……!」
スタンリーは少しだけ考えた後、ライフルを下ろした。
「助かったな、ガール。」
そう呟くと、彼はその場から立ち去った。
玲央は川に流されながらも、必死に岩場へしがみついた。
(……生き延びた、か。)
だが、ここからどう動くかは、まだ分からない。
玲央は激しく息をつきながら、次の一手を考えていた。
スタンリーが戻ってくると、ゼノは冷静な表情で彼を見た。
「無駄な時間を使ったな。」
「確実に仕留められた。」
「……だが、君は撃たなかった。」
ゼノは鋭い目でスタンリーを見据えた。
スタンリーは黙っていたが、やがて肩をすくめた。
「……生きてても、どうせ流されて死ぬ。」
ゼノはしばらく沈黙した後、微かに笑った。
「さて、どうだろうな。彼女のしぶとさは、我々の想像を超えているかもしれん。」
玲央はなんとか流木にしがみついたまま、岸へと流れ着いた。
だが、全身の力はすでに限界だった。
(……もう……ダメかねぇ……。)
視界がぼやけていく。
最後に見えたのは、空に瞬く星の光だった——。
そして、玲央の意識は、暗闇へと沈んでいった。
——ザブン。ザブン。
波の音が、遠くから響いていた。
冷たい水の感触と、砂のざらついた感覚が肌にまとわりつく。
「……ッ、また……生き延びた、のか……」
玲央はゆっくりと目を開けた。
視界に広がるのは、見たことのない岸辺。
辺りは夕焼けに染まり、空は赤と紫が混ざり合っていた。
体を起こそうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走る。
「クソッ……なかなかハードな目覚めじゃんか……」
腕や足には無数の傷。
服はボロボロで、冷たい海水に濡れたせいで体温が奪われていく。
「……まずは動けるかどうか、チェックだねぇ……」
玲央はゆっくりと指を動かし、次に手を握ったり開いたりする。
何とか感覚はある。
足も、力を入れれば動く。
「……オッケー、ギリギリ生き延びる余地はありそうだねぇ……」
そう呟きながら、玲央はゆっくりと立ち上がった。
しかし、立ち上がった途端に視界がグラリと揺れる。
「うわっと……ッ」
咄嗟に木の幹に手をつき、倒れるのを防ぐ。
体力はほぼ尽きかけていた。
何日も漂流していたのか、体の水分が奪われているのが分かる。
「……まずは水と食料を確保しないとねぇ……」
玲央は息を整えながら、ゆっくりと森の中へと足を踏み入れた。
生存本能——玲央、野生の中で生き抜く
森の中は静かだった。
だが、注意深く耳を澄ませば、小川の流れる音が聞こえる。
「ラッキーだねぇ……」
玲央は体の痛みに耐えながら、小川へと向かう。
手を伸ばし、冷たい水をすくい上げると、一気に口へと流し込んだ。
「……ッ、生き返る……」
体の奥に染み渡る水の感触に、玲央は安堵の息を漏らす。
「さて、次は食料……何か食えそうなもんは……」
玲央は辺りを見回し、野生の果実を見つけた。
慎重に毒性を確かめながら、いくつかを口にする。
甘さと酸味が混ざった果実が、空腹の体に染み渡る。
「……とりあえず、これで今日は生き延びられそうだねぇ……」
夜になれば、体温がさらに奪われる。
玲央は急いで枯れ枝を集め、小さな焚き火を作った。
パチパチと燃える火を見つめながら、玲央は息を吐いた。
(……千空たち、無事にしてるかねぇ……)
仲間たちの顔が浮かぶ。
クロム、コハク、スイカ、そして——千空。
(……オレがいなくても、どうにかやってんだろうけどさ……)
玲央はじっと炎を見つめながら、静かに決意する。
「こんなところでくたばってらんねぇ。オレは……帰るんだよ。」
目を閉じ、焚き火の暖かさを感じながら、玲央は次の一手を考え始めた——。
コメント
2件
主人公ちゃんイケメンすぎじゃん