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#高校生
第2章 「止まった夏」第21話 「春の終わり」
2020年 春。
柳城高校野球部。
小早川啓介、三年生。
福間監督就任から三年目。
チームは、確実に強くなっていた。
県内でも、柳城は“台風の目”と言われ始める。
「今年の柳城は違う」
そんな記事が新聞にも載っていた。
グラウンド。
ノックの音が響く。
「声出せ!!」
小早川の声。
一年生だった頃とは違う。
今は、チームの中心だった。
守備練習後。
一年生捕手が息を切らして座り込む。
「小早川先輩、よくあんな動けますね……」
啓介は苦笑する。
「慣れや」
すると横から舞が言う。
「お兄ちゃんも一年の時、毎日ヘトヘトだったよ」
「言うなって」
ベンチに笑いが起きる。
だが――
その空気は、突然変わる。
昼休み。
部室のテレビ。
ニュース速報。
『新型ウイルス感染拡大――』
『全国でイベント中止相次ぐ』
部員たちが画面を見る。
「やばくないか……?」
誰かが呟く。
数日後。
学校が休校になる。
グラウンドから、人が消えた。
誰もいないベンチ。
静かなネット。
春季大会中止。
柳城ナインは、それぞれ自宅待機となった。
小早川は、自宅近くの河川敷を走っていた。
一人で。
音がない。
野球ができない。
仲間にも会えない。
こんな春を、誰も想像していなかった。
夜。
食卓。
テレビでは連日、感染者数のニュース。
母親が不安そうに言う。
「夏、大丈夫かねぇ……」
啓介の箸が止まる。
誰も答えられない。
数日後。
オンラインでのミーティング。
画面越しに並ぶ部員たち。
福間監督は静かだった。
「今は耐えろ」
「野球だけが人生やない」
部員たちが黙って聞く。
「でもな」
福間監督の目が変わる。
「野球を奪われても、“諦める理由”にするな」
その言葉に、小早川は顔を上げる。
「出来ることをやれ」
「止まるな」
画面越しでも、その言葉は重かった。
ミーティング終了後。
小早川はスマホを見つめる。
そこに舞からメッセージが届く。
『絶対、夏ありますよ』
短い文章。
だが、小早川は少しだけ笑った。
窓の外では、春の雨が降っていた。
そして――
誰も知らない。
この夏が、日本中の高校球児にとって“特別な夏”になることを。
第21話 終
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