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「あんた、何やってるの病気が移るでしょ!!」
リビングに、美紗子の金切り声が響き渡った。
奈央の裏風俗での動画がネット上で完全に特定され、近所や親戚に知れ渡るのも時間の問題となった日のことだ。 美紗子は自分の「まともな母親」という世間体が崩壊する恐怖から、奈央の髪を掴まんばかりの勢いで怒鳴り散らした。
奈央は、怒り狂う母親を、冷めきった目で見つめ返した。 その表情には、恐怖も罪悪感もない。
奈央は静かにスマートフォンを取り出し、画面を美紗子の目の前に突きつけた。
「おかあさんが承認欲求のためにSNSで私たちの画像目隠してあげたことと何がちがうの?」
「な、何言ってるのよ! 私はあんたたちを守るために……!」
「これ、おかあさんが書いたんだよね」
画面に映し出されていたのは、あの夜、他人のフリをした奈央に送られたDMのスクリーンショットだった。
『死ねばいい。子供なんか産まなきゃよかった。私の人生を返して欲しい』
美紗子の顔から、血の気が一気に引いた。 唇が小刻みに震え、言葉が出ない。
「おかあさんも、ネットの画面に向かって、私たちの存在を切り売りして、人生を返せって叫んでたじゃない」
「私の身体を売るのと、何が違うの?」
悪意のない、純粋で致命的な正論。
美紗子が築き上げてきた「被害者の聖域」が、実の娘の手によって粉々に粉砕された瞬間だった。