テラーノベル
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閉店後のピザ屋。
店の中は静か。
オーブンの熱だけが残っている。
カウンターに並ぶ二人。
エリオットの手には――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し引き寄せられる。
「……」
チャンスが言う。
「それ」
「ん?」
「離す気ないな」
エリオットはにこっと笑う。
「ない」
ネクタイをくるくる指に巻く。
「チャンス逃げるから」
「逃げないって」
「ほんと?」
チャンスは肩をすくめる。
「たぶん」
エリオットが笑う。
「たぶんか」
少し沈黙。
外のネオンが窓に映る。
エリオットがぼそっと言う。
「チャンス」
「ん」
「もし」
ネクタイを軽く引く。
ぐい
距離が近くなる。
「逃げたら」
チャンスが眉を上げる。
「?」
エリオットは楽しそうに言う。
「捕まえに行く」
チャンスが少し笑う。
「どこまで」
エリオットは即答する。
「どこでも」
チャンスが吹き出す。
「マフィアいるぞ」
エリオットは肩をすくめる。
「ピザ持ってく」
「意味わからん」
エリオットはネクタイを引く。
ぐい
「チャンス」
「ん」
「俺」
少し間。
にこっと笑う。
「しつこいよ」
チャンスが小さく笑う。
「知ってる」
エリオットはネクタイを指に巻く。
くるくる。
「逃げたら」
「?」
「ネクタイ引っ張れない」
チャンスは少し黙る。
それから言う。
「……そんな理由で追ってくるのか」
エリオットは笑う。
「半分」
「半分?」
エリオットは少しだけ目を細める。
「もう半分は」
チャンスが聞く。
「なんだ」
エリオットは少しだけ間を置いて。
そして。
またネクタイ。
ぐい
かなり近い距離。
エリオットはにこっと笑う。
「秘密」
チャンスは数秒黙る。
それから小さく笑う。
「怖いな」
エリオットが首を傾げる。
「俺?」
チャンスは頷く。
「お前」
エリオットは楽しそうに笑う。
そして。
最後にもう一回。
ぐい
「じゃあ」
にこっと笑う。
「逃げないで」
チャンスはため息をつく。
でも。
その口元は少し笑っていた。
「……努力する」
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