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閉店後のピザ屋。
店内は静か。
カウンターに並ぶ二人。
エリオットの手には――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し引き寄せられる。
「……」
チャンスが言う。
「それ好きだな」
エリオットはにこっと笑う。
「うん」
ネクタイを指に巻く。
くるくる。
「チャンス逃げそうだから」
「逃げないって」
エリオットはまた軽く引く。
ぐい
距離が近い。
「ほんと?」
チャンスは肩をすくめる。
「たぶん」
エリオットが笑う。
「たぶんか」
その時。
外で――
キッ
車のブレーキ音。
チャンスの目が一瞬動く。
エリオットは気づかない。
「チャンス」
「ん」
「逃げたら捕まえるって言ったでしょ」
チャンスは小さく息を吐く。
視線はドアの方。
外に影。
足音。
コツ…コツ…
チャンスの声が少し低くなる。
「エリオット」
「ん?」
「ネクタイ」
エリオットは笑う。
「やだ」
また。
ぐい
その瞬間。
ドン
店のドアが叩かれる。
エリオットがびくっとする。
チャンスは動かない。
ドン ドン
外から声。
「開けろ」
エリオットの笑顔が消える。
チャンスは静かに言う。
「来た」
エリオットが小さく聞く。
「……誰」
チャンスは答える。
「マフィア」
ドアがまた叩かれる。
ドンッ
「中にいるのは分かってる!」
エリオットはネクタイを握ったまま。
チャンスを見る。
チャンスは少しだけ笑う。
「悪い」
エリオットが言う。
「謝るとこ?」
チャンスは肩をすくめる。
「巻き込んだ」
エリオットは数秒黙る。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが引き寄せられる。
「……」
チャンスが言う。
「今それ?」
エリオットはにこっと笑う。
さっきの挑発の顔に戻っていた。
「逃げる?」
チャンスが少し笑う。
「状況見ろ」
外。
銃を構える影。
ドアの向こうで男が叫ぶ。
「三秒だ!」
エリオットはネクタイを離さない。
そして小さく言う。
「チャンス」
「ん」
「逃げたら」
チャンスが答える。
「捕まえに来るんだろ」
エリオットは笑う。
「そう」
チャンスは小さく息を吐く。
「ほんと」
ドアが蹴られる。
ドンッ
チャンスは立ち上がる。
でも。
ネクタイはまだエリオットの手。
チャンスが言う。
「離せ」
エリオットは首を振る。
「やだ」
「危ない」
エリオットはにこっと笑う。
「知ってる」
外で声。
「二!」
エリオットはネクタイを強く引く。
ぐい
チャンスの顔が近くなる。
エリオットは静かに言う。
「チャンス」
「ん」
「逃げないで」
外。
「一!」
チャンスは数秒エリオットを見る。
それから。
小さく笑う。
「……逃げない」
その瞬間。
バン!!
ドアが蹴破られた。