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雲一つない晴天。ぎらきら照りつける日差し。虫たちは活気付き、たまに見かける人は、死んだ目をしている。
…2人を除いて。
「水冷た!やったなこの…」
「そんな怖い顔しないで〜。ほら、アップップ」
「…あんた覚悟しとけよ」
どうしてこうなった。
ことの発端は前回に遡る…
「じゃあさ、良かったらりょうの地元に行こうよ。私旅行したかったし。それに…」
「りょうの思い出掘り起こそうぜってことか?」
「正解♪」
「楽しそうだし、俺も連れてってよ〜」
「いいよー。まあ、りょう次第だけど」
地元…。最近帰ってなかったな。そう思うと同時に、しょうが口を開く。
「上京してきたんだっけ?りょうが地元に帰ってないの意外。」
「なんとなく、帰んなきゃっては思ってたんだけどね。タイミングが合わなくて。この機会だし、帰ってみようかな。」
「いいじゃん、いこいこ」
半ば強引に連れられて、今に至る。
「しっかしりょう、元気ねえなぁ。暑いんだったら水浴びしようぜ。座ってたってって暑いだけだぞ?」
僕が言葉に迷っていると、りんが口を挟む。
「わかってないねぇ。りょうは今すぐにでも思い出集めに行きたいんでしょ?何年友達やってると思ってるのさ」
「えっと…新社会人になった日から数えて…。ななな、なんとたったの112日!?!?」
「うっさいな、ただの比喩じゃないのよ」
そんなことより、思い出集めに行こうよと僕が話すと、2人は笑った
「なんで笑うんだ」
「いやぁ、わかってたことだけど、やっぱりいつより張り切ってるなあって」
「そうそう、いつもはなーんか思い詰めてるみたいだし、近寄りがたいじゃん。でも今は少し吹っ切れたみたいに見える」
しょうが軽い相槌をした後、「なんでもいいから、早く行こう」と急かすように話した。
海辺から離れ、少しずつ夏の不愉快な気持ちが戻ってきたところで、僕たちは足を止めた。
そこは、カラスたちの集う、小さな神社だった。
何故か妙な気持ちになったのだ。
「りょう、どうしたの?」
「…」
「りょう?」
「っあ、えっと…」
「…すこし、思い出してて」
この神社は、小学生の頃、秘密基地にしていた場所だ。
まだ風のように、無邪気にはしゃいでいた頃、強引に誘っては遊んでを繰り返していた。
花が咲き誇る春の日や、少し汗ばむ夏の日、葉が落ちて一面赤色に染まった、秋の日も、雪一面の冬景色だって、毎日のように通った秘密基地ではどれも輝いていた気がする。
中学生になってからは、恥ずかしくて仕方がなくて、めっきり忘れてしまっていたけど…
でも、なぜかそれだけではないと感じている。
「ここ、人に関する神社らしいね」
「本当だ。絵馬自体は少ないけど、恋愛のことだったり、アイドルと会えますようにとか、願望混じりの絵馬まである」
「幅広いんだねぇ」
「せっかくだから、祈ってから行かない?」
「しょうにしては珍しく真面目なこと言うじゃん?まあ私も思ってたけど」
「そうだね、せっかくだし。これも一つの縁ということで」
僕たちは手を合わせたその瞬間、ピリッと脳に電流が走る。
カラスに追いかけ回されている子供。
人2人入っていっぱいの、小さな小さなテント。
お小遣いの100円を持って、駄菓子屋に駆け込む男女。
幼馴染だろうか?ひどく馴染みがある。
クスッと、笑みが漏れたその次に見えたのは、モヤのかかった…女の人。
いや、少女と呼ぶべきだろう。
無邪気な笑顔で、自分が一生懸命に探し出した四葉のクローバーを、僕に差し出している。
何故だ?なぜこんなにも、心が動く?なにも変な光景ではないはずなのに!
どくどくと、心臓の音だけが聞こえた。