テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……話してみるよ。本当はまだあいつへの気持ちを上手く昇華できてない。大切な母と妹の命が、父親の優柔不断さで失われた訳だから、何回も『たられば』を考え、頭の中で憎い奴を酷い目に遭わせてしまう。……この呪いから完全に逃れるには、まだまだ時間が必要だ。……でも、結婚式を挙げなければならないなら、胸の奥にわだかまりがあっても、父親と話し合い、和解したという〝形〟を作らなきゃならない。あとは自分の問題だ」
「お供つかまつります」
中トロを食べ終えて言うと、尊さんは「武士か」と突っ込んで笑った。
「でも、前も感じたけど、尊くんの傍にいてくれるのが朱里ちゃんで良かったわ。こうやって深刻な話をしていても、彼女が明るく道を照らしてくれる。尊くんはもう、一人で暗い道を歩いていないのね」
小牧さんが言い、尊さんは私を見てポンと背中を叩いてきた。
「お陰様で、幸運の招き猫に恵まれてるよ」
「にゃーお」
私はモグモグしつつ、両手で猫の手の真似をする。
「俺たちは二人とも暗い過去を背負っているが、なぜか二人揃うと明るくなれるんだ。不思議だよな」
「あれ、尊さん知らないんですか? マイナスかけるマイナスは、プラスになるんですよ。陰キャ同士が集まると、相乗効果で陽キャになるんです」
「……なんかその理論だと、世の中大変な事になりそうだな」
尊さんは呆れたように言い、小牧さんと弥生さんはクスクス笑っている。
「さ、たっぷり食べましょう」
「はーい!」
弥生さんに言われ、私は元気よく返事をしてお寿司の続きにとりかかった。
**
結局、お会計は残る四人のテーブルは大地さんが払い、私たちのテーブルは尊さんが祓ってくれた。
その後、待ってもらっていたハイヤーに戻り、観光地でもある千畳敷へ行った。
「わー! 海だー!」
「朱里、足元気をつけろよ」
私は目の前に広がる太平洋を見てテンションを上げ、尊さんに注意される。
千畳敷は名前の通り、千枚の畳が積み重なったような崖だ。
意外とお土産屋さんなどもあって賑わっていて、観光客が大勢いる。
説明書きの看板によると、千八百万年から千五百万年にできた地層が、波に侵食されてこのような複雑な地形になったとの事だ。
「私たちはここで待ってるわ」
百合さんと将馬さんに付き添ったちえりさんが言い、私は「はい」と頷く。
確かにお元気そうに見えても、一つ間違えたら怪我をするかもしれない場所を、あまり歩こうとは思わないんだろう。
「おとととと……」
私は緩やかな傾斜になっている岩場を下り、その下の岩場をゆっくり下りていく。
イメージで言えば、棚田みたいな感じと言えばいいんだろうか。
段差の低く、それでいて面積の広い岩が重なっているので、思っているより歩きやすい。
「尊さん、尊さん、はいっ、自撮り棒~!」
私は某便利グッズの猫型ロボットの声真似をし、自撮り棒にスマホをつける。
「ケアンズの海も綺麗でしたけど、日本の海もいいですよね」
「だな」
私たちはそう言い合い、千畳敷と海を背景に記念撮影する。
景色を堪能したあと、車で五分の距離にある三段壁洞窟へ行った。
入場料は大人千五百円で、京都で神社仏閣を拝観するのと似た値段だ。
三段崖洞窟は、エレベーターに乗って断崖絶壁の中に潜り、洞窟の中から海を見る観光地だ。
尊さんが潮の満ち引きを示す、タイドグラフというのをチェックしてくれたけれど、どうやらこの日は十六時半ぐらいが満潮らしく、十四時過ぎの今はそこそこ潮位が上がっている。
案内図を見ると、エレベーターで下に下りて、洞窟の中をグルッと一周できるコースがある。
私たちはザッパーンと波が打ち寄せる様子を動画に収め、神秘的な洞窟内も写真に撮る。
中には牟婁大辯才天を祭っている場所もあり、沢山の神様の像がズラリと並んでいる様は圧巻だ。
どうやら「いかなる願いも叶える」と言われているようで、私は念入りに尊さんといつまでも幸せラブラブできるよう祈った。
勿論、周りの人の健康や長生きなども。
十五分ほどで見終わったあとは、車に戻り、海岸線のドライブを楽しみながら今夜の宿へ向かった。
**
臣桜
47,045
パラレル・ゲーマー
142
#工場長
パラレル・ゲーマー
2,364
パラレル・ゲーマー
625
コメント
1件
ひゃ〜!第841話、もう尊さんと朱里ちゃんの関係性に胸がきゅんきゅんしすぎて倒れるかと思ったよ😭💕「マイナスかけるマイナスはプラス」理論、確かに!陰キャ同士が集まって陽キャになるって発想、めっちゃ納得しちゃった笑 千畳敷の景色とか三段壁洞窟の描写も綺麗で、二人で観光しながら絆深めてるのが伝わってきてほっこりしたよ〜🌸 最新話も最高でした!応援してるっ!🥰✨