テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
日暮ミミ♪
855
latte
732
#溺愛
星キラリ

3,683
楽地みどり
465
一応、会社から少し離れた街を選んだ。そこで適当な洋風居酒屋へ入ってとりあえずビールで乾杯をした。
「やっと二人きりになれた」
軽口をたたく白田くんに、
「本当だね」
と、私も乗っておく。
「ずっと話したかった。昔のことも今のことも」
「聞きたい。なんでも話して」
私たちは、まずはこの前の飲み会でも話したようなバイト時代のみんなのエピソードなど当たり障りのない話をした。そして、二人だけのエピソードの話に移っていった。遠くからじわじわと中心に入っていくような感じだった。
結局派遣さん同士のいざこざの相談はなさそうだった。
失敗話をゲラゲラ笑う私を、やはり楽しそうに見ていた彼が突然言った。
「好きだった」
「何が?」
「美里さん」
「!」
急に話の流れが変わった。驚いてグラスを置いてしまった。
「俺のことどう思ってた?」
「……好きだったよ。たぶん」
「でも振られた」
「うん。安定してた彼氏と別れる勇気がなかったの」
「で、どうして離婚したの?」
私はどう誤魔化そうか悩んだ。でも、本当のことをぶちまけてしまいたい気持ちにもなっていた。
「あ、ごめん。プライベートなことだもんね」
一瞬固まった私の反応を見て空気を読んだのだろう。せっかく昔みたいに話せたのに距離ができてしまうのが寂しいと思ってしまった。どうせ派遣期間が終わったらまた会えなくなるんだろうしと、私の気持ちはぶちまける方へ傾いた。
「先に言っておくね。ひくかもしれないよ」
「どんとこい!」
「あはは。……二十四歳過ぎた頃からかな、ほぼレスになったの」
「……」
「彼はその間風俗に通ってて」
「……」
「一度目だしって許しちゃったんだけど、その後もたいして変わらなかった。でもプロポーズされて、家族になったら何かが変わるかなと思ったんだけど」
私の右目から涙がこぼれるのを感じた。
「悪化しちゃった。子作りのためだけにセックスして、その他は放っておかれて、また風俗に行かれて……」
彼は真剣な顔をして黙って聞いていた。
「で、一度辞めた会社に出戻ったの。私女として魅力がない分、一人で生きられるように働かなきゃと思って」
思わず笑ってしまっていた。半分泣きながら。こんな話されて、なんて返せばいいかわからないよね。ごめん。
「……んで」
「えっ?」
「なんであの時しっかり奪ってしまわなかったんだろう。就職の決まった年上の大学生に勝てると思わなかったんだよな。失敗したー!」
彼が突然叫んだ。
「でも、白田くんもすぐに可愛い彼女ができたって聞いたよ」
「ああ、美里さんに振られたから前から何度も告ってきた彼女と付き合い始めたんだけど、束縛がすごくてバイトのみんなと撮った写真なんかも勝手に捨てられたりして、わりとすぐに別れたんだよね。だから、美里さんの電話番号も写真も何もなくなって」
「あらまぁ」
私は間抜けな返事をすることしかできなかった。
しばらくの静寂。
口を開いたのは白田くんだった。
「それで、会社では女性らしい格好を避けているの? こないだの飲み会の青いスカート姿すごく良かったけど」
「あの日は若い頃の知り合いに会うわけだし、ちょっとだけ気合いが入ってたかも」
「美里さんて、まだ三十一だよね?」
「うん。もう三十一」
「普通そのくらいの女の人ってこれから結婚するような人も多くない? 女盛りってやつだと思うんだけど」
「そうかもしれないね」
「自分はそうじゃないと?」
「……」
今度は私のターンだ。
「白田くんは今の私を見て抱きたいと思う?」
「思うよ」
即答だ。ちょっと怯む。
「もちろん、誰でもいいわけじゃないよ。再会して、話して、やっぱり魅力的だと思ったんだよ」
私の欲しい言葉をくれる白田くん。
もしかして、騙されてる? お金を取られるとか、昔振られた復讐とか?
でも、私はそれでもいいと思った。自分に欲情する人に抱かれたいと思った。たとえ終わった直後に酷いことを言われたとしても。
「じゃあ、抱いて。ううん、違う。しよう」
コメント
1件
わああ第6話…!めっちゃ重くてあったかいエピソードだった…😭💕 美里さんの過去の傷、そして白田くんの「思うよ」の即答がもう刺さりすぎて言葉にならない…!! 「斜め上へ進む」ってタイトル、まさにこの展開を表してる感じがしてエモすぎる…。 お互いの今をしっかり受け止め合おうとする空気感が、すごく好きです…!続きが気になりすぎるよ〜🌸