“明日は、家族について作文を書いて発表してくださいね!”
今日の帰りに言われた先生からの連絡。
『はぁ……。両親……』
今でも脳裏にこびりついている光景。
父が母を庇い、母が俺を庇って殺された光景。
『両親の、こと……』
大好きだった両親を思い出そうとすると、どうしてもあの光景が再生される
楽しかったことを思い出したいのに、
1番嫌いな記憶ばかり……
「ひーわーのーくんっ!」
沈んだ気分で歩いていると後ろからいつもの声が聞こえた
『…なんだ?淡乃。』
振り返れば、想像していた通りの白髪がこちらへ向かって走ってきていた
「へへっ!これあげる!」
差し出された手を見るとどんぐりが握られていた
『どこで拾ったんだ?ぼうしつきじゃん』
「んー、ないしょ!ひわのくんもいじめられたの?顔くらい!」
また今日もいじめられたのか泥だらけでボロボロの淡乃は楽しそうに話し、少しだけ心配そうに燈和野の顔をのぞきこんだ。
『いじめられてない。俺はお前と違って強いから囲まれることなんかない!』
「む!ぼくだってつよくなるもん!」
『淡乃はうんどーしんけーが悪いからなぁ〜』
「そんなことないもん〜!」
そうやって何気ない会話をしていたら沈んでいた気持ちはどこかへ行ってしまって
施設に帰った頃には作文に書きたい内容がしっかりと浮かんでいた
[後日]
『俺の両親は─────……』
作文を聞いていた先生の顔が少し暗くなる
『……父は母を、母は俺を守りました。俺は何も守れませんでした。でも、これから先、友達や大切な人ができた時、かっこいい両親のように強くなって守れる人になります。』
言い終わるとまばらな拍手が聞こえた。
周囲からは心配するような同情するような視線を受けたが、それは気にならなかった
今の俺には、守らないといけない”友人”が居るから
『(二度と、失くしてたまるか。)』
真面目で素直な少年の、大きな成長のひとつだった。
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