こんばんは。3話です。今回も5話完結です。それではどうぞ
楽屋は、いつも通りのはずだった。
勇斗の席は空いたまま。
マネージャーの説明は「安静のためしばらく休み」。
それだけ。
誰も深く聞かない。
聞けない、の方が正しいかもしれない。
柔太朗は、いつも通りに笑っている。
「勇斗、元気らしいで」
軽い口調。
でも。
仁人は気付いてしまう。
目が合わない。
必要以上に明るい。
会話をすぐ切り上げる。
「……ほんまに?」
思わず聞く。
「何が?」
柔太朗は笑う。
「元気って」
一瞬。
ほんの一瞬だけ、間が空く。
「大丈夫やって」
それだけ言って、視線を逸らす。
胸の奥がざわつく。
何かある。
でも、それを聞く資格が自分にあるのか分からない。
その日の帰り。
仁人が楽屋を出ると、廊下の端で柔太朗が電話をしているのが見える。
声は小さい。
「……うん」
「まだ言ってへん」
心臓が跳ねる。
誰に、何を?
「せやけど、今は言われへんやろ」
低い声。
普段聞かないトーン。
仁人は思わず足を止める。
柔太朗が振り返る。
目が合う。
一瞬で、電話が切られる。
「……何してんの」
「別に」
それだけ。
それ以上、何も言わない。
沈黙が重い。
「俺に言うこと、ない?」
思わず出た言葉。
柔太朗の表情が揺れる。
でもすぐに、いつもの顔に戻る。
「ない」
きっぱり。
その言い方が、逆におかしい。
仁人の胸が締まる。
ごめん。
まだ言えていない三文字。
そして、
まだ知らない“何か”。
距離は縮まらない。
勇斗とも。
柔太朗とも。
仁人は初めて思う。
――もしかして、俺だけが知らない?今日病院に行ってみようかな……
その考えが、静かに芽を出す。
ED






