テラーノベル
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早速少し長いですが4話です。どうぞ
病院の廊下は、静かすぎた。
何度も来ようとして、来れなかった場所。
今日は逃げない。
仁人は深く息を吸う。
病室の前。
ノックをする手が震える。
「……どうぞ」
勇斗の声。
それだけで、胸が締めつけられる。
ドアを開ける。
勇斗はベッドの上に座っている。
目は、開いている。
でも。
視線が合わない。
どこを見ているのか、分からない。
「仁人?」
声だけで、気付く。
その事実が、喉を締める。
「……うん」
足が動かない。
でも来た意味は一つ。
言うために来た。
あの三文字を。
勇斗が少し笑う。
「わざわざ来なくてもよかったのに」
その優しさが、余計に痛い。
「俺」
声が震える
「……ごめん」
やっと出た三文字。
仁人の声は震えていた。
「俺が押した。止められたのに、止めなかった。俺のせいだ」
涙が止まらない。
勇斗は静かに聞いている。
怒らない。
責めない。
ただ、受け止めている。
しばらくして、勇斗が言う。
「うん」
短い返事。
「仁人、来ると思ってた」
仁人は顔を上げる。
勇斗の目は開いている。
でも、焦点は合わない。
「……俺、許すって言わないよ」
心臓が一瞬強く打つ。
でもその声は冷たくない。
「だってさ」
少し間を置いて、続ける。
「仁人は、許されること望んでないでしょ?」
仁人の呼吸が止まる。
「自分がやったことだって、分かってる顔してる」
図星。
許してほしいわけじゃない。
ただ、逃げたくなかった。
背負うって決めたから。
勇斗はゆっくり息を吐く。
「俺が“許す”って言ったら、
それ、軽くなる気がするんだよね」
静かな声。
「これは事故でも、なかったことでもない」
「でも、事の発症は俺だしね、笑」
「俺も整理するし、仁人もちゃんと向き合って欲しい」
怒っているわけじゃない。
突き放しているわけでもない。
ただ、同じ重さで立とうとしているだけ。
仁人は涙を拭きながら頷く。
「……うん」
勇斗が小さく笑う。
「でも、謝ってくれたのはちゃんと届いてるよ」
それだけで、十分だった。
三文字は、罪を消さない。
でも、距離は確実に縮めた。
ED
コメント
1件
最高すぎる、。 めちゃくちゃ感動する、 2話連続で話出してくれてありがとう😖💗