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薄明かりの差す部屋の中で、タクトは古びた木箱を前に座っていた。箱には重厚な金具が施されており、何度も修復された形跡がある。これが、マデスが突然現れて彼に託した「力の象徴」だと聞いた時は、半信半疑だった。
「開けてみぃや。えらいもんが眠っとるでぇ。」マデスが意味深に微笑んだのを思い出す。
タクトは慎重に箱の蓋を開けた。中には、一振りの美しい刀が横たわっていた。漆黒の鞘に包まれ、柄には繊細な彫刻が施されている。その見事な輝きと佇まいに、彼はしばし言葉を失った。
「これが…俺の武器ってわけか。」タクトは静かに刀を取り出し、手に取ってみた。鞘から抜くと、刃先が微かに光を放ち、まるで生きているかのように脈打っているように感じた。
「その刀、ただの剣やあらへんで。神と人が融合した、特別な武器や。」マデスが後ろから軽やかな口調で説明を加えた。
「特別な武器?」タクトはその言葉に反応し、刀を見つめた。
「そうや。タクト君には悪魔と戦う力があるが、足りへん。武器となるもんが必要や。そいつがあれば、お前の力も一層強うなる。」
「これで…本当に悪魔に対抗できるのか?」タクトは刀を構えながら、不安を隠せずに問いかけた。悪魔との戦いは日に日に厳しさを増している。最近では中級や高級悪魔が次々と現れ、その凶悪さはタクトの力だけでは限界が見えてきていた。
「ふふ、心配せんでええ。この刀、切れ味やないんや。お前の意思が強うなれば、刀の力も増す。逆に、弱気になったら、その分刀も弱まる。まあ言うたら、お前次第ってことやな。」
「俺次第、か…。」タクトは深く息を吸い込んだ。この刀が、自分の心の強さに依存するということを聞き、逆に気が引き締まる。戦う覚悟が足りなければ、命取りになるということだ。
「よぉし、早速試してみよか。」マデスが口元にニヤリと笑みを浮かべた。「この辺り、ちょっとした悪魔がうろついてるからな。初稽古にはちょうどええ。」
「急だな、マデス。」タクトは驚いたが、緊張感が少しだけ解けた。彼は再び刀を握りしめ、すぐに外に出る準備を整えた。
外に出ると、辺りは薄暗く、不気味な静けさが漂っていた。風がささやくように吹き、木々の間に何かが潜んでいる気配を感じた。
「ここか…」タクトは周囲を見回しながら、慎重に歩を進めた。すると、突然足元の影が揺れ、不気味な笑い声が響き渡った。
「ケケケ…小僧よ、死にたくば近寄るがいい…」
その声と共に、地面から黒い影がゆらりと浮かび上がり、悪魔の姿が現れた。小柄だが、全身を黒い霧のようなものが覆い、凶悪な笑みを浮かべている。
「お前が試し相手か。」タクトは刀を構え、冷静に相手を見据えた。
「小僧、お前ごときが私に勝てるとでも?」悪魔は口元を歪めて嗤った。「この刀でお前を切り裂いてやろう!」
「切り裂かれるのはお前だ。」タクトは静かに言葉を返すと、刀をしっかりと握りしめ、呼吸を整えた。彼の意志が強まるにつれ、刀の輝きがさらに増していく。
「さぁ、いくぞ…!」タクトは一気に悪魔に向かって駆け出した。足元が風のように軽くなり、刀が自然と手の中で動き始めた。悪魔が襲いかかる瞬間、タクトは一瞬でその動きを見切り、鋭い斬撃を放った。
「ぐあぁぁっ!」悪魔は叫び声を上げ、その姿が霧散して消えた。
「ほう…やるやんか。」マデスは遠くからその様子を見つめ、満足げにうなずいた。
「これが…刀の力か。」タクトは息を整え、刀を見つめた。まだ慣れていないが、その力は確かに実感できた。
「まぁまぁ、上出来やろ。これからもっとお前の力を鍛えていかなあかんで。悪魔との戦いは、これからが本番やからな。」
タクトは静かに頷いた。マデスが渡したこの刀――それは、これから彼が直面するさらなる試練への第一歩に過ぎなかった。