テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「虚言に窃盗、虫の殺害や不法侵入……傷害とそして何よりも人間を2人殺しておる。お前さんの罪はざっとこんな感じじゃな。」
そう言ってガルムは、私の額に突っ込んでいた指を離した。
「は?虫の殺害とは?」
「そりゃあ、人よりも罪は軽いとはいえ虫の命を大量に奪ったことじゃ。こっちについてこい。」
(虫の殺害も罪になると、ほぼ全人類が罪犯してることになるじゃん……)
ガルムは背後にある扉を開けて中に入る。
いや、この狭い場所から扉を開けて出るの方が適しているだろう。
扉の奥には、とんでもなく広い地下空間があるからだ。
まず、手前にあるのは巨大な鍋だ。
2人の獄使が金棒で、人の入った鍋の中をかき混ぜている。
熱した鉄の上でバーベキューのように身を焼かれる人達、十字架らしき物に磔にされている人なども見えた。
「私もあれのような体験をするってことですか。最悪……あ、腕が。」
気づくとガルムは刀のような刃物を持っていて、灰色のコンクリートの地面には私の両腕が落ちてた。
「これから永い間お前さんは阿鼻界で暮らすんじゃ。」
「そんなことより、手がないと痒いところを掻けなくて困るんですけど。」
ガルムは私の腕の断面に刃物を刺す。
「刺すのではなく、腕を戻して欲し……生え方気色悪。」
ガルムが刃物を離すと、断面から腕が生えてきた。
「お前さんへの説明は大体終わりじゃな。何か質問はあるか?」
「疑問しかないですよ。こんな適当で短すぎる説明を627834回もしてきても、説明の内容に何も成長がなさそうで貴方に哀れみを感じますね。いや、元々はもっと説明の仕方が雑で、改善してやっとこの状態ということでしょうか。…………ところで、この魚は何者なんですか?」
2匹の魚は私の両脚にまだ噛みついている。
「こやつ、妾がした説明をめっちゃ罵倒してきてムカつくのう。おりゃっ。」
ガルムが私の首に手刀をする。
私の視界は灰色コンクリートだけが映っていた。
どうやら、私の首が切断されたようだ。
「さっきの質問に答えてください。」
既に死んでるからか、首だけでも喋れた。
だが、頭部がない方の身体は動かせない。
「これは、現生界っぽく言うと三途の川にいた魚もどきじゃな。阿鼻界へ行く途中の死者へ罰の為に作られたやつじゃ。」
頭部のない私の身体を、ガルムはその片足を掴んで持ち上げた。
「現生界?」
「お前さんが生きてたときに暮らした世界じゃ。」
「ちなみに、魚もどきは食べれるんですか?」
「さあ?自分で食ってみたらどうじゃ?」
「こんな状態の肉体だと自分で食べれません。ガルムがあれを直接私の口に運ばせてください。」
「めんどくさいから嫌じゃ。」
ガルムは乱暴に私の首を掴んで身体にくっつけさせる。
くっついたことで首から下の身体も動かせるようになった。
地面には先程刀で切断された私の旧両腕が落ちたままだった。