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奏茉と空茉が魚の掴み取りで無双しているところを、私は眺める。
子供らしくはしゃぐということが、今の私にはできない。中身はいい大人だ。でも、それを心配してくれている両親がいる。
今回のキャンプも、任務のためというのが主な理由なんだろうけど、私のことを少し心配していたということも知っている。
「無事に、帰ってきますように」
2人が怪我をして帰ってきたら、奏茉や空茉になんて説明をするのか。もし泣いてしまったらどうしてくれるんだ。
そんな暗い思考を奏茉が遮る。
「相羅〜!!大漁大漁!」
カゴいっぱいに入った魚を見て私は少し引く。いくら運動神経がいいからって取りすぎだろ。前世が熊だったのか?
2人が係員の人にカゴを持ってもらいながらこっちに来る。次第に魚の生臭い匂いと血の匂いが濃くなってくる。
「それ、内臓出して貰ったり冷やしてもらったりしなきゃでしょ」
「えっそうなの?」
奏茉はキョトンとした顔をして首を傾げる。空茉はしまったというような顔をした。
「係の人に水場に持って行って貰えばよかったのに…」
「確かに!!」
奏茉のオーバーリアクションに私は顔をしかめる。オーバーなリアクションはうるさくてあまり好きではない。
「係の人はもう仕事に戻ったし、奥の手を使うか…」
「相羅どうするの?」
空茉が不思議そうな顔をする。さっきの奏茉のキョトンとした顔にそっくりだった。頬がゆるむ。
「こうするんだよ」
私は少し深呼吸する。
「おじさん、このカゴあの水場まで持って行ってくれない…?私達だけだと重くって…」
通りがかりのおじさんに声をかける。優しそうな人だし、きっと快く引き受けてくれると思ったその矢先。
「あぁ?そんなんお前らの両親に頼めや」
私たちを睨みながら言う。まったく、世の中嫌な大人しかいない。
私はため息をつき、他の人へ声をかけようとしたその瞬間、空茉がそれを止めた。
「へぇそっか。おじさんたちこれが重くて持てないから断ったんだよね?でもさぁ、ちゃんと持てないからって断ればいいのに」
空茉のハイライトがなくなった目を見て一気に鳥肌が立つ。奏茉も身震いしていた。
「ほんと、大人ってバカだなぁ」
5歳児の空茉、煽り精度が高い。
空茉の言葉を聞いた大人はさらに口調が強くなり、私たちに暴言を吐いてくる。空茉の煽りは5歳児にしては高いが、大人にしてはただの煽りだ。逆鱗に触るだけ。あとで注意しないとなと思いながら私はおじさんたちに頭を下げる。
すると、おじさんの大声に反応した周りの人たちが子供が頭を下げたのを見ておじさんを批判する。
相手を煽るというのはこうするのだ。いい気になっている人を、自分できっかけをつくり、周りの人がそれに反応して一気に落とす。
その瞬間の、焦った大人の顔は見ものだ。
「大丈夫?お姉さんたちが持って行ってあげるね」
優しいお姉さんたちに私たちは大きくお礼を言った。