水場でプロと思わしき人に魚の内蔵を取ってもらう。すると、私たちの前に並んでいたおばさんが一緒に魚を食べようと提案してくれた。私たちはおばさんの家族と共に魚を塩焼きして食べる。優しい大人の方が多くてよかったと安心してしまう。
「ありがとうございます、わざわざクーラーボックスにまで入れてもらって…」
「いいのよ、あなた達のご両親が来たら渡すからね」
「はい。じゃあ奏茉と空茉、休憩したし浅い方で川遊びしていいよ」
その言葉を聞き、奏茉は空茉の手を取って走って行った。それを眺めていると、おばさんの家族のお姉さんが話しかけてくる。
「にしても、相羅ちゃんはとってもお利口さんなんだね」
「…お利口さん?」
まさかの言葉に私はびっくりする。他人にそれを言われるとは思わなかった。
「言葉遣いも動きも全部、5歳とは思えないほど大人っぽいから」
それを聞いて私はしまったと思う。
私はなるべく子供らしい言動を心がけているのだ。今思えば、魚を運んでもらうところから私は5歳がするとは思えない言動をしていたことに気づく。
「相羅〜!!」
遠くから聞こえる奏茉の声に私は反応する。一緒に遊びたいらしい。
私は奏茉達の元へ走って行った。
「えーっと、密輸の場所は南側だから…」
「南ってどっちよ」
「知らん」
だいぶピンチになっていた。
森に入ってから2時間以上迷い込んでいたが、野生の勘なのか奇跡なのか、たまたま密輸の場所まで来ることができた。
「見つけた!」
「なっ、なぜここが…⁉︎」
すかさず攻防が始まる。すぐそばには川の水量を調整する堰があった。
「おらぁぁぁ!!」
父親が板をターゲットにぶつける。その衝撃でターゲットは気を失った。脳震盪だ。
「ちょっと待って、その板ってまさか…」
「…あ、やっちゃった⁉︎」
その板は堰の要である板だったのだ。
「早く戻して!」
「戻した!」
だが時すでに遅し。大量の水が下流へと流れていたのだ。
「なんか音しない?」
奏茉が上流の方を見る。
「別に…なんもないけど」
でも、こういう時の奏茉は役に立つ。一応私たちは川から出ることにした。
すると、アナウンスが入る。
そのアナウンスを聞いた人たちは一目散に川から上がる。大人は子供を抱きかかえていた。
「コロ!!」
小さな女の子の声が響き渡る。見ると、そこには小型犬が溺れていた。助けようとしてもすぐ大量の水は押し寄せてくる。それを誰もが知っていた。
でも、私の足は自然と動いていた。
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