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#夢
凪川 彩絵
コメント
2件
なんてこと! るりかちゃんの勘違いだと信じてる!
うわ…このすれ違い、沁みるなあ🥀 「謝罪は何に向けてのもの?」って思っちゃう瑠璃香の気持ち、分かりすぎてしんどい。抱きしめられてるのに力抜けない描写がリアルで、読みながら息止めてた。晴永さんが優しければ優しいほど、逆に不安が深まるの、ていねいに書かれててすごい…🖤
どこかだけが、うまく〝いつも通り〟だと思えなかった。
(晴永さん……)
晴永は、ちゃんと帰ってきてくれるだろうか――。
胸の奥に、小さな不安がどろりとわだかまった。
***
――鍵の開く音がしたのは、ようやく手を止めた、その直後だった。
「ただいま」
聞き慣れた声に、肩がわずかに揺れる。
「……おかえりなさい」
いつもなら揚げ物でもしていない限り玄関先まで出迎えるところだが、今日はどうしても出来なかった。かわりに、リビングへ入って来た晴永へ向けて、できるだけいつも通りに笑う。
晴永はネクタイを緩めながら、まっすぐこちらへ歩いてきた。服装は、やはり家を出た時のラフなものとは変わっていた。
昼間に悦子と見たときの服装と一緒かと聞かれたらはっきりとそうだとは肯定できない。でも……服が変わっていることで、あのときの違和感が、逆に裏付けられた気がしてしまった。
「悪かったな、今日。――急に呼び出されて……断れなかった」
その声音に、違和感はない。
いつもと同じ、仕事を優先せざるを得なかったときの顔。
でも、今の瑠璃香はどうしても晴永を呼び出した相手は、藤井田令嬢だったのではないだろうか? と思ってしまう。
脳内ではそんなことを思っていたけれど、自然に振るまえたと思う。
「……いえ。……お仕事なんですから、仕方ないですよ」
少なくとも、声は震えていない。
晴永は一瞬だけ瑠璃香を見つめて、それから小さく息を吐いた。
「そう言ってくれるのは有難いが、……俺は瑠璃香と動物園、行きたかった」
ぽつりと零された言葉に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
(……分からない)
昼間に見た光景と、目の前の彼の言葉が、うまく結びつかない。
「……あの……、ご飯、できてます」
それ以上考えないように、話を切り替える。
「ああ。ありがとう。手、洗って着替えてくる」
晴永がそういって洗面所へ消えていくのを見送りながら、瑠璃香は食卓の準備を整えた。
ほどなくして戻って来た晴永と二人席について、何でもない会話をしながら食事をする。
味は、ちゃんと分かるはずなのに……どこかぼんやりとしていて、うまく入ってこない。
それでも、笑って、相槌を打って……懸命に〝いつも通り〟をなぞる。
食後、片付けを終えてふと振り返った瞬間、腕を引かれた。
「……っ」
そのまま、抱き寄せられる。
強くも弱くもない、いつもの力加減。
「……ほんとに、悪かった」
耳元で、低く囁かれる。
その声に、身体がぴくりと反応した。
(晴永さん、その謝罪は、〝何に向けてのもの〟なの?)
そう思った途端、自分でも分かるくらい、身体が固くなっていた。
いつもなら心地よいはずの晴永の腕の中が、妙によそよそしく感じられた。
抱きしめられているのに、力が抜けない。
(……なんで?)
分からない。
拒みたいわけじゃないのに、うまく、晴永からの好意に応えられなかった。
今日は……晴永と一緒には眠れない、と思った。
晴永は少しだけ間を置くと、そっと腕の力を緩めてくれる。
「……瑠璃香、やっぱり怒ってる?」
心配そうに揺れる瞳。
その表情からは、彼の浮気を疑う余地なんて、どこにもないように思えた。
でも――。
「……怒っては……いないです。ただ……」
かすれた声が出た。
それを誤魔化すみたいに、眉根を寄せる。