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朝、スマホの通知音で目が覚めた。
ベッドの中でまどろみながら画面を見ると、珍しく真由美からのメッセージが届いていた。
彼女は高校時代の友人で、今は私と同じく独身の歯科医。SNSではいつもカフェやテーマパーク、習い事の写真を投稿し、リア充ぶりを発揮している。だけど、特に誰かと親密な関係になった様子はなく、あくまで「自由を満喫する独り身」といった雰囲気だった。
私たちの交流といえば、彼女の投稿に適当に反応して、ハートマークのリアクションをもらうくらい。メッセージのやり取りなんて滅多にしない。それなのに——。
『奈々子が死んだ』
その文字を見た瞬間、頭が真っ白になった。
まだ眠気が残っているせいか、現実味がない。漢字の間違いだろうか? いや、それとも悪質な冗談? そう思いながら、何度も目をこすって画面を見直した。
——でも、メッセージの内容は変わらない。
嘘だ。そんなはずはない。
奈々子が? 死んだ?
指が震えながらも、すぐに真由美に電話をかけた。メッセージでは埒が明かない。何より、確かめなければいけない。
滅多にかけない電話。それなのに、コール音が鳴る間の時間が異様に長く感じる。
『もしもし……』
ようやく繋がった真由美の声は、いつもの陽気さとはかけ離れていた。か細く、今にも消え入りそうな声だった。
「もしもし、おはよう……」
『おはよう……』
「どういうこと? 奈々子が……」
『奈々子が、奈々子がっ……』
電話越しに、彼女が泣いているのがわかる。嗚咽混じりで、言葉にならない。
——でも、なぜ?
正直、真由美がここまで取り乱すのは意外だった。彼女は確かに奈々子と親しくしていたが、それはどこか一方的な関係だった。
卒業後もたまに会い、「久々に奈々子と遊んだよ〜」とSNSに写真を上げる。けれど、その裏では、奈々子の話を面白おかしく他の友達に言いふらすこともあった。
奈々子が「SNSやめようかな」と漏らしたときも、『やめないでよー! つまんないじゃん』と軽く引き止めた。それが「彼女の私生活をネタにしたいだけ」なのだと、私はわかっていた。
それでも奈々子は怒らなかった。真由美と過ごす時間を大事にしていた。だからこそ、真由美がここまで取り乱していることに、私は戸惑った。
『……っ、奈々子が……!』
何かを言おうとして、けれど言葉にならず、真由美は泣き続ける。
私はふと、通知に気づいた。
電話が繋がる直前に、もう一件、別の友人からメールが届いていた。
『奈々子が亡くなったと、お母様から連絡がありました』
差出人は美樹だった。奈々子と同じ地域に住んでいる彼女なら、情報が早く入ってもおかしくない。
真由美のメッセージの時間より、かなり前に届いていた。
つまり——これは、真実なのだ。
奈々子は、本当に、死んだのだ。