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「ナギ、ちょっといいか」
は~い、とドアを開ければ、マックスさんとショルダーさんだ。
「これからどうする? とりあえずは昼飯だな。その後、街でも見るか?」
「うん、いろんなお店を見てみたい。甘味屋さんとか美味しいものがあるところや、お土産とか、服とかみたい」
土産って誰に?
「えっと、食堂の人たちと受付のお姉さんたち、買取カウンターのおじさんたち、ドールーハおじさんとか」
あははは、おもしろいなお前、と笑われる。なんで?
「まあ、お前らしくていいよ。でもお前とフラットの欲しい物なら買えばいい。フラットの毛をすくブラシなんかもここならあるぞ。お前の髪も少しはとかせ」
じゃあ、それも買う。
うんうん、と二人は楽しそうだ。
でも、二人は用事はないのかな。
「二人は? 用事はないの? 遊びに行かなくていい?」
問題ない、と言ってくれるけどいいのかな。
「気にするな。俺たちはお前とフラットが大好きだ。だから喜ぶ顔も見たいし、楽しんでもらいたい。田舎じゃなかなか楽しいこともないだろ?」
嬉しいな。そんなこと言ってくれるなんて。
ありがとう、と二人に抱きついた。役得だな、と笑う二人は楽しそうだ。
「じゃあ、飯だな。フラット、飯に行こう」
ショルダーさんが声をかければ嬉しそうにベッドから降りた。
宿の食堂は、朝以外自由メニューだって。
朝は忙しいから決まってるみたい。フラットの料金も別にかかってると聞いたので、安心した。
メニューを見てまず注文したのは、クリームパスタだ。大盛りで二人分頼む。そしてチキンソテー、ステーキ、ライスとパン、野菜サラダ、肉野菜煮込み……
ウエイトレスさんは呆れている。
マックスさんとショルダーさんもたくさん頼んでいた。なんでこんなに大きなテーブルなのかと思ってたけど、このためか。
「相変わらず大食いメンバーはすごいな」
ピットさんが向こうのテーブルで笑っている。
パーティーでひとつのテーブルにいるみたいだけど、ゴールドさんの前にもすごい量がならんでるよ。
草原の風はいつもと同じ通常運転だね。
次々運ばれて来る料理を片っ端から片付けるフラットは、俺の足下のでっかいボウルに料理を入れておいてやれば、即食らいついている。お腹すいてたんだな。
ここのクリームパスタもなかなかの味だ。濃厚さが一段とアップした感じかな。そうだ、パスタを買ってなかった。いつもの店にあるだろうけど、あれば買って帰ろう。
チキンソテーはギルドの方が勝ち。お米は美味しかった。パンはふわふわで柔らかい。フラットは気に入ったみたいでお代わりしてた。
食べたことのない料理もあったし、概ね美味かった。
ジャガイモとお肉を煮たものは、肉じゃがだね。グラタンには変わった形のマカロニが入ってたのに驚く。そしてエビとか魚のフライがあったのには大感激した。
どこで買うのかと聞いてみれば、大きな商会にあると教えてくれたので、絶対に行きたい!
後で連れて行ってくれると聞いて安心する。どうやらそこにブラシなんかもあるらしい。全ての商品が揃うといってもいいくらいの店だと聞いた。もしかしたら、醤油もあるかもね。
うずうずするほど楽しみだ。
でも、フラットがまだ食べてるんだ。足りなくてお代わりしたし。肉じゃがを注文してみたら、美味しいの連続だ。
あははは、と笑う二人に他のメンバーは買い物に行くと先にいってしまった。この様子じゃ、何か食べるものを買ってくる方がいいかもしれない。夜になったらいろんな人が来るだろうしね。
やっと終わったフラットの口元は酷いことになっている。
クリーンで綺麗にした後、お金をはらって宿を出た。
宿はいいね、食堂の伝票が別に来てたから精算も早い!
ゆっくりと通りを歩きながらキョロキョロしている俺はお上りさんだ。となりを歩くフラットに手を置いて話しながら歩いてるんだけど。フラットはいい匂いがするとアレは何かと聞くので、看板を見て答えてやる。美味いかどうかは大人二人に答えてもらうんだけど。
何軒かの屋台で買い物をして、やっと到着したのは、でっかいでっかい店構えの商会だ。
「いらっしゃいませ」
そう迎えられて、中に入る。
「マックス様。いらしてたのですね」
「ああ。領主の護衛でな。で、今日は客を連れて来た。規格外の客だから大事にしとけよ。ナギ!」
なにぃ~? と呼ばれたのでフラットとマックスさんのところに行けば、店員さんと話していた。
「ナギだ。そして眷属のフラット。ナギ、ここならなんでも揃うから聞いてみろ」
うん。
「こんにちは。ナギです。今日は欲しい物がたくさんありますけど、いいですか?」
一瞬驚いた店員だったが、笑顔で対応してくれるみたい。
「もちろんでございます。何でもご用意致しますのでお知らせください。では、さっそく。何をお探しですか?」
店員さんがメモらしきプレートを手に聞いてくれる。マックスさんを見上げれば大きく頷いてくれたので、遠慮は止めた。
「えっと。フラット用のブラシと、僕の髪の毛用のブラシが欲しいです。あと、大豆で作った黒っぽい液体調味料はないですか? それと甘いもの、お土産にできそうなもの、服とか、家に飾れるものとか。美味しいものもたくさん欲しいです!」
ふふふと微笑みながらメモを取ってくれる店員さんは優しそうだ。
「かしこまりました。では、ブラシから参りましょうか」
フラットのブラシを売っている場所へと移動する。日本で言えばペットコーナーだ。ブラシは俺が掛けるので、今の大きさくらいでかけないと体力がもたない。
どれがいいかなと見ていれば、失礼しますとフラットの毛に触れた。これはどうでしょうかと出されたのは黒いブラシだ。魔物の毛でできているらしく、先端は柔らかめだけど、奥の方はしっかりと固めで、余分な毛をすき取ってくれる。その上ツヤが出るらしい。
手で触ってみれば、なかなかいいかもしれない。あまり固すぎると皮膚に傷が付くという。お風呂でも使えると言われたのでそれに決めた。
他にもいろんなものがある。まあ、ペット用だけどね。
ふけやかゆみが出にくいシャンプーとか香りのいい石けんなどもあるんだけど、どうかな。石けんくらいはあった方がいいかもね。あとは、ちょっと食べるおやつがあったけど、これは一度に一袋は食べそうだ。
興味深かったのは、従魔用のお手入れ商品だ。でも、かなり毛が硬い従魔のものらしい。フラットは長い毛で先端はふわっとしてて、皮膚に近いほど固くなっているから必要なさそうだ。
『ねえ、ナギ。これなにかな。丸くてきれいお菓子だよ』
「じゃあ、ここはこれくらいで。フラットが美味しそうなものを見つけたみたい」
なんだ? と二人は俺の後を付いてくる。もちろん店員さんも。その後ろでは、俺が注文したものを籠にいれた男性が続いていた。
フラットの目の前に並んでいるのは飴だ。
どうぞ、と二個手に取ってくれる店員さんは、一個をフラットの前に手のひらにのせて差し出した。俺も一個もらったけど。
こっちを見るフラットに頷けば、ペロッとそれを口に入れたフラットは、甘い! と大喜びだ。俺も口に放り込めば、間違いなく飴だよ。
「こちらはシュガードロップといいまして、今王都で流行っております。あまり小さな子供さんにはお勧めできないのですが、ちょっと甘いものが欲しい時には重宝しますよ。それにきれいでしょう?」
うん、確かにきれいだね。
これはお土産にもなるよ!
瓶に入ったのもあるので、見た目もとてもきれいだ。
「じゃあ、この瓶のやつをお土産用に包んで。数は十個でお願いします」
十個? と驚いてるのは大人二人組だ。
フラットは袋入りにする。十個いりと二十個いりがあるので、二十個入りをどれくらい買うかな、と見ていれば暑いところだと周りが溶けるので気をつけてくださいと言われる。まあ、砂糖だしね。
二十個いりを十袋たのむ。
隣りにあるのはクッキーだね。それも買うというので、箱で買うことにした。少しずつ出せばいいし。小分け用に袋入りも頼む。三十個入って入るらしい。
その隣りには見かけはカステラ? これはどうかと聞けばたくさん欲しいという。試食用があったみたいで、食べたらすごく美味しかったって。
じゃあ、このカステラも三十本頼む。
そしてパウンドケーキは五種類をそれぞれ十個ずつ。
プリンみたいなものは、まさにプリンだった。これはゲットするしかない。売り場にあったのは三十個。本日販売可能な数は五十個だと言う。どうしようかと悩んでいれば、全部いいですよと囁いてくれたので、当然の様に全部買う。
やっぱり王都は違うね。珍しいものがたくさんある。
その後も、ひと通り甘味を味見したフラットは、欲しい物を言うのでわかりやすい。たくさん欲しいとかこれはいらないとか。少しでいいよというものは買うのを止めた。
次はいつも食べてるチーズやミルクのコーナーだ。
チーズとバターはいつものやつとラベルが違う。まあ、あっちは自家製だって言ってたしね。
じゃあ、チーズとバターをごっそり買うことにする。そして今朝絞りたてだというミルクも。鑑定すれば間違いなかった。瓶も一リットルのものと三リットルのものがあるようで、ちゃんと立てて運ぶ箱があるらしい。可能な限り欲しいといえば、運搬用の箱に入れてくれると聞いて嬉しくなる。
既にアイテムボックスを持っていると聞いているようで、驚かない店員さんだ。
後ろの男の人以外の人たちがバタバタと準備を始めている。
その他は、と肝心な醤油を見に行くことにする。
豆でできた東方の調味料はこのあたりだときいて見てみれば、あったよ、醤油! と言っても見た目だけなんだけど。
ソイオイルと書いてあるんだけど、オイル?
そうじゃないと味見させてくれた。
間違いなく醤油だ!
これはどれくらいあるのかと聞けば、既に小瓶で十本ほどと大瓶で八本だけだと聞いた。それなら全部欲しい。
どうやら高級レストランや海鮮レストランから注文がくるらしい。来週には入荷するらしいけど、来週まではいないからと言えば、問題ないですよと言ってくれた。
ふふふ、醤油が手に入ったら焼きおにぎりができるぞ。
醤油があるならもしかして、と見てみればどう見ても味噌だ。
これはどう使うのかと聞けばスープにするんだと教えてくれる。鑑定でも同じことが出た。ただ、味噌汁にするとあったのは面白い。
じゃあ、これもくださいと甘口をお願いした。
まさに味噌樽っと言ってもいい入れ物に入っているようで、田舎味噌と合わせ味噌の中間くらいに見える。甘口と書いてあるので、間違いない。味見したのと同じ商品だ。これは三つにした。かなりの大きさなので問題ないでしょう。
他には? と聞かれて味噌こしを説明すれば当然のようにあったよ。そしてすり鉢セットを見つけた。でもなにに使うかと考えて止めた。
他にはと思い出した、パスタとマカロニ!
売り場へ移動すれば、いろんな乾麺が置いてある。
その中から、細めのパスタと見たことのあるマカロニを数種類買うことにする。パスタは箱買いだ。マカロニはそれぞれを大袋で五つずつ。
乾燥うどんとかないだろうかと見てみたけど、さすがになかった。
あと、小麦粉に薄力粉がある。これも買うことにした。
粉物の所にパンケーキなどを膨らませる粉を発見! フラットも俺も、パンは好きだけどパンケーキはもっと好きだ。これは買いでしょ。小さな箱にはいっているので、たくさんはいっている大箱を買うことにする。
うーん、いろんな料理は知ってても、食べたことのないものや作り方を知らないものは作れない。
それじゃあ、と海鮮を見に行った。
半身の魚がたくさん並んでいる。サーモンとか鯛とかと同じ種類の魚たちだ。不思議と赤身はない。だが、マグロっぽいのがあった。これはかなり大きな魚で、部位で全く違うものらしい。マグロでしょうよ。
鑑定すれば、どれも生で食べられるらしい。水揚げされた後、すぐにアイテムボックスに入れて運んでくるので新鮮だとあった。
マリネや刺身、フライ、ステーキなどに適しているとある。
これは絶対に買う!
サーモン系と鯛系、マグロを根こそぎ買った。明日、また届くので問題ないと言ってくれたからだ。
フラットが何かと聞くので、戻ったら美味いの食べさせるからと言えばわふっと嬉しそうだ。
あとは、パン粉が欲しいんだけどと探していればありましたよ!
パン粉とは書いてないけど。粉パンだって。逆じゃん。
それも欲しいとそこそこの大きさの袋をひと箱買う。肉でも魚でもフライができるし、なによりトンカツが食べられる!
他は……
とりあえず、ぐるっと中を見ることにした。
気になったのは本、木製のオーナメント、オブジェなど。
そして家で着る服がたくさんある。
あまりたくさん買うと、大きくなったときに着られないから、コーディネートしてもらって、上下と靴を五セット買った。家でしか着ないからどうでもいいんだけど。
あとは油。オリーブオイルがあったから。
これはパスタやドレッシングには必須でしょ。これは大きな缶を二つ買う。
ぬいぐるみがたくさんある中から、フラットによく似たものをチョイスする。そしてでっかーいクッションだ。フラットがリビングで転がるときに寝られればと思ったけどさすがにそれほどの大きさはないから、枕くらいの気分で買うことにした。
一応、これで終わり、と言えばマックスさんとショルダーさんは呆れている。
「こんなに買って大丈夫か? 美味い物食べさせてくれるならいつでも家に行くぞ?」
うん、いいよ~
ほんとか!
ふふん、不思議なやり取りだけど、いいよ。
やった! と二人だけだからな、と念を押される。どうやら他の人には来て欲しくないらしい。でも、ギルマスは強敵だよ。
じゃあ、と明細を見せてくれた。
うん、いろいろ買ったね。
では、と合計金額を見せてもらう。
思ってたよりも安かった。もっと驚くほどかと思ったけど。
小さな財布から金貨七枚と銀貨八枚を取り出して支払う。
ありがとうございます、と受け取りをもらった。それぞれ木箱や籠に分けてくれてるから収納も楽だよ。
魔法で一気にアイテムボックスへと収納すれば、さすがに店員さんは驚いていた。
「またのお越しをお待ちしております」
そう言ってもらって、ありがとうと礼を言い店を出た。
フラットは、小さな袋に入ったあめ玉をなめながら歩いている。なくなったらちょうだいと言うからわかりやすいんだよ。