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 これが真剣に考えたと言うルールなのなら、彼はなぜ私を結婚の相手として選んだのだろう? まさか単に私が彼にとって都合の良い幼馴染みだったから?

 ……そうでなければ、こんな酷いルールを私に提案してくるわけがない。


「そんなことはない! 俺はただ真剣にしずくとのこれからの事を考えて……!」

「二人の未来を考えているのに、どうしてお互い別に恋人を作らなきゃならないんです? それって不倫でしょう?」


 岳紘たけひろさんの言う“夫婦間不純ルール”は、私は夫の……夫は私の浮気を認め合う。そんな内容だったのだ。その理由はやはり岳紘さんが私を女として見れないからなのかもしれないが、あまりにも酷いのではないだろうか?

 悔しさからかじわりと滲んでくる涙、それを夫に見せたくなくてギュッと唇を噛み締めた。

 少なくとも私は彼の妻で、夫は一度私を抱いたのだ。それなのにまさかその夫から……ずっと好きだった相手から浮気を勧められるなんて思いもしなかった。


「他に、気になる女性でも出来たんですか……?」


 ルールには私だけでなく、夫の岳紘も別に恋人を作って良いことになっている。ならば彼が私ではない誰かとの付き合いを望んでいると考えた方が、このルールを作った理由としてはしっくりくる。


「…………」

「……図星、ですか」


 夫は何も答えない、俯いて私と視線を合わせないようにしているということはそういうことなんでしょう。馬鹿馬鹿しくなる、今まで必死で彼が私を女性として見てくれるまで努力してきたことはすべて無意味だったのだ。

 一途に夫を愛し、彼を信じて暮らしてきたのに。岳紘たけひろさんの心はとっくに別の女性へと向かっていたのか。


「離婚は考えてないんですか? こんなルールを作るよりその方がずっとお互いにためになるのでは?」


 どうしてだろう? こんな状況なのに涙の一滴も出てくる気配はない。むしろ目と喉が乾いて頭の中がぼんやりする、思考回路が鈍っているような気がした。

 夫婦としての触れ合いがなかったこと以外、問題のない関係だった。でもやはり、私たちは表面だけの夫婦にすぎなかったと言うことなのかもしれない。


「……離婚は、嫌だ」

「どうしてですか?」


 中途半端な夫婦関係を続け、他の相手と愛を交わすなんて私には理解できない。それが私のためになるとも思えないし、そのうち苦しくなるのが目に見えている。

 ……それなのに。


しずくとの離婚は望んでないし、これから考えるつもりはない」

「……?」


 夫の岳紘さんは以外と頑固なところがある、こう言い出したらすぐには意見を変えないだろう。その理由に心当たりがないわけではなく、 私は小さくため息をついた。


 確かに私たちは恋人同士の期間もあり、きちんと恋愛をしての結婚ではあった。だけど私たち二人の交際、結婚を強く望んでいたのは互いの両親でもあったから……

 私や夫の岳紘たけひろの親はそれなりに有名な会社の経営者である。昔からの友人だと言うその父達は、子供同士を結婚させて二つの会社をより大きな物に成長させようと約束していたらしい。


 私たちが結婚したいと話した時の、父達の嬉しそうな顔は今でもしっかり覚えている。そんな二人に簡単に離婚したいなど、岳紘さんでも言い出しにくいのだろう。

 運が悪ければ怒り狂った私の父に、どんな仕打ちを受けるかもわからない。


「私から、離婚をしたいと父に言えば問題ないですよね? 別にそれでいいですよ、なんなら慰謝料も無くていいです」


 こんな時、自分はもっと感情的になるんだと思ってた。ショックを受けて泣いて、憤りを相手にぶつけて大騒ぎするのだと。それなのに現実は違った、ショックのあまり頭はまともに働かなくて感情的にもなれないまま……

 ただ、もう一緒にいることは出来ない。そう感じていた。


「離婚はしない、しずくがなんと言おうと君は俺の妻だ」

「心も身体も何一つ私のものでないのは、岳紘さんの方じゃないですか? それなのに私には妻でいろなんて……」


 こんな提案をされなければ、何も知らないまましばらくはこの人の妻でいれたかもしれない。けれどこの結婚になんの未来も望めないと知らされれば、誰だって……

 少なくとも私は岳紘たけひろさんの事を愛していた。結婚するよりもずっと前、小さな子供の頃から彼に憧れそれはいつしか特別な想いへと変化していったのだから。

 だからこそ彼が他の相手と深い関係になるのを傍で黙ってみていることなどできるわけがない。


「我儘を言っていることは分かってる、だけど俺にはしずくの存在が必要なんだ」

「……よく、そんな酷いことが言えますね。私にだって心くらいあるのに、岳紘さんから離れることも許してくれないの?」


 何を言われようと私の気持ちは離婚に向かっている、夫婦としての夜がなかったためもちろん子供もいない。それなら尚更無理をして、こんなルールまで作り二人で暮らす意味などないはず。

 ……そう、思っていたのに。


「雫のお父さんがこんなに早く離婚して、君が家に戻ることを許可するだろうか? もし俺が引き止めているのにそれも聞かずに出ていったと言えば、すぐにこの家に戻るように説得されるだけだ」

「何を言ってるんですか? そんなの離婚したい理由を言えば……」


 そう、岳紘さんが私以外の女性と特別な関係になりたがっている。それを話せば父だって私が離婚を望んでいるのを理解してくれるはず。だけど……


「俺は浮気をしていると言った覚えも認めた訳でもない。雫がお父さんにそう話しても俺ははっきりと否定するよ、離婚するつもりはないってね」

「そんな!?」



夫婦間不純ルール

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