美味い美味すぎる!春人は駅につき一件の定食屋に入るとメニューの端から端へと注文して食欲を満たしていた。
調味料、ダシの味、そして素材そのそのもの味を堪能していた。
周りの客も、店員も春人の食いっぷりに釘付けになっている。
一通り食い尽くし、満たされた春人は立ち上がりノートを広げる。
刑務所で出所したらやる事をリストにしていたのだ。
「毎度あり!」春人が会計を済ますと店員もほっとした様子で元気に感謝の言葉を告げる。こんだけ注文すれば支払いの心配もするだろう。
春人は定食屋の向かいのコンビニにそのまま入ると、ライターを手に取りレジに向かう。
「すみません、ラークマイルドひとつください。」
2年ぶりに吸うタバコ、このまま禁煙すればいいのにまた、喫煙者に逆戻り。
コンビニの外にある灰皿を相棒にしゃがみ込み、タバコに火をつける。
煙がゆっくり肺に入り、ニコチンが血液と共に体を巡り脳にたっする。
「あぁあぁーっ うめぇ~」
一本のタバコを時間をかけ堪能して空を見上げる。すげ~幸せだ。
その頃、麻帆は町の駅に着いた。この町はこの一年半で3回くらいしか来たことがなく、改札の外にある周辺地図をみる。
スマホがないとすごい不便だ。
3ブロック先の交差点に家電量販店がある。外は眩しい日差し、日傘をさし目的の場所に向かうのであった。
「一服したし、次はあの欲を満たすかな」ノートをめくりリストを指差す。
春人はご無沙汰だった性欲を満たそうとしていた。18歳の盛りの時期、発散したいのは分からないでもない。
とはいうものの、真昼間の田舎町タバコを吸いながら駅を眺める。
アスファルトには陽炎が浮かび、その陽炎に包まれかながらショートパンツに白いTシャツの少し派手目な女の子が春人のいるコンビニの方に向かってくる。
近くにつれその全貌が明らかになってくる。髪の色は茶髪のギャル形の女の子だ。
すかした顔でコンビニむかってくる。久しぶりに女性をガン見した春人は女の子から目を離せない。
女の子も自分をガン見する春人を見るが、そのままコンビニに入る。
春人は立ち上がり、コンビニ内で物色する女の子を再度ガン見する。
ペットボトルを手に取り女の子はレジにいく。会計を済ませるとコンビニの外へ、灰皿のそばにいる春人をチラッと見るがそのまま歩きだす。
「ねえちゃん!」春人は女の子の手を掴み引き止める。
「何すんだよ」女性は罵声を浴びせる。
ちょうどその横を通り過ぎる麻帆、日傘の隙間から、男女がコンビニ前でもめているのを横目でみる。
田舎暮らしが長いと、こういった刺激的な現場に出くわすことがなく、恐怖のあまり小走りで通り過ぎる。
ロングヘア、色白肌、春人にとってドンズバの女性が過ぎ去っていった。それはまさに家電量販店へ向かう麻帆だった。
「クソガキお前のせいで、ナンパのタイミング逃したじゃねぇか」春人はショートパンツの女の子に罵声を浴びせる。
「そんなの知るかボケ、腕離せよ」
女の子は騒ぎたて春人に捕まれた腕を振り払おうとする。
外の騒ぎを察した店員が店内からでてきた。
「どうしました警察呼びますか?」店員は女の子に警察を呼ぶか尋ねる。
「おい おい ちょっとまてよ」春人は焦り店員を止める。
明日出国するのに怪我したり、事故に巻き込まれたら最悪だ。麻帆は足早に騒ぎの場所を離れていった。
「はぁーはぁーはぁ」息が苦しい。。
やっと家電量販店に到着した。さすが家電量販店、エアコンがガンガンにある効いている。少し涼むと本来の目的であるイヤホン売り場へ向かう。
色々と種類があって悩んでしまい、結局予算をつげて店員のおすすめする。イヤホンにした。
「お会計はあちらのカウターでお願いします。」
麻帆は誘導されカウンターに向かう。
「あれ?」
財布がない!改札を出るときは確かにあった。となると駅からここにくる間に落としたのかもしれない。
店員に財布を落とした事を説明して、来た道を戻ることに。
こんな田舎の町だか、唯一栄えているともあり人通りはそれなりにある。
スマホはわすれるし、財布は無くすし、追い討ちをかけるように熱い日差しが身を焦がす。
駅まで戻るが見当たらない、最悪だ。僅かな希望を持ち、交番に行くことにした。
「すみません」麻帆は日傘を閉じ交番の中に入る。中にいたのは、女性と揉め事をしていた男、春人だ。
(うわーさっきの暴れてた男が捕まってる)
麻帆は目を合わせないようにして警察官に財布が届いてないか聞く。
警察官は麻帆にどんな財布を落として何が入っていたのか、いくら入っていたかを尋ねた。
「薄いピンクの花柄で、15,000円くらいはいってました。」
「パンティみたいな柄だな(笑)」後ろに座っていた春人は小さな声で呟いた。
麻帆は振り返らず、下を向いたままこう言い返した。
「今何かいいましか?」
「パンティみたいだって思って口が滑っちまった」笑いを堪えながら春人はそういった。
麻帆のボルテージは一気に頂点へ「犯罪者のくせにふざけた事言わないでください。」
「想像してたの違って、気が短いお嬢ちゃんだね」
麻帆は立ち上がり、春人の元へまずいと思った、警察官が2人の間にわってはいる。
貴方の財布はこちらですか?もう1人の警察官がピンクの花柄の財布を持ってきた。
「それです、私のです」
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