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警察官が持ち出してきた財布は麻帆の言う通り、ピンクの花柄の財布でした。
「ありがとうございます、届けてくれた方は?」
警察官が少し苦笑いして私の後を指さした。指さす先には、偉そうに椅子に座りさっきの男が頭をかきながらニタついている。
「そこの青山さんが届けてくれたんですよ。。。」
「そんなの嘘です、女性に手をあげる、最低の男ですよ、さっきコンビニの前で見ました」
警察の話によると少女がコンビニで万引きをしまして商品を返すよう説得していたようだ。麻帆の予想を裏切り、ことごとく、この男が善人に評価されていく。
財布は戻され、麻帆と春人は交番の外へでる。
「コーヒーおごって」春人はそういうと前方に見えるカフェを指さした。
確かにあの状況でお礼の言葉はかけていない、しかしコーヒーをおごれなんて図々しい男だ。そう考えている間に春人はさっさとカフェに向かい、振り向き麻帆に手を振る。
なんなのあいつ、恥ずかしいからやめてほしい、仕方なく麻帆も後を追う。
カフェに入ると、一番奥のテーブル席に春人はすでに座っている、今時のスタバとかはこの町にはなく、昭和のレトロ感のある古いカフェだ。店内は少し薄暗く濃いブラウンの家具でコーディネイトされたインテリア。
「なんかいいよね、こういう雰囲気」麻帆は無視をする、春人はタバコに火をつける。
「ちょっとあなたいくつよ?」
「18」
「子供のくせに、消しなさいよ」
「子供だって(笑)そういうお前はいくだよ」
なんなのよこの男、それに泣きそうな顔でコーヒー飲むとかありえない。それもそのはず、2年ぶりにのむアイスコーヒーは春人にとって最高の瞬間であった。
「あっ俺、春人、あんたは?」
「えっ」麻帆は伝えるか伝えないか少し悩んだが明日は日本を出発するし名前を伝えた。
「麻帆か。。。いい名前だなぁ似合ってる」春人はそういうとアイスコーヒーをお替りした。
麻帆は人から名前を褒められることや、同じ年ごろの男性と話すことも遠のいていた為少し恥ずかしかった。そして何よりも気を落ち着かせて春人をみるとかなりのイケメンだったのだ。何故か悔しいけど、この年頃はビジュアルからはいってしまう。
頭は良くなさそうだが、明るい性格で、財布も拾ってくれたし、万引き犯も捕まえ勝手な潜入感で誤解していた事に気付きだしていた。
「さっきはごめんさい、、、」麻帆は気持ちを振り絞り春人に素直謝罪した。
「疑われるの慣れてるから(笑)コーヒーおごってもらったし」
麻帆は、美味しそうにアイスコーヒーを飲み幸せそうな春人の顔に見惚れていた。
こんなふうに自分も笑えたらいいのに
「ん?何か顔についてる?」
「別に、久しぶりにこんなアホヅラ見たかららついぼーとしただけです。」
麻帆は少し頬を赤く染め目を逸らした。横目で春人を見るとニコニコ微笑んでいた。
「ツンケンした顔で可愛いんだから、笑ったらもっと可愛いと思うよ」
ヅッキューン 可愛い。。私が可愛い?悔しい、こんなイケメンにそんなこと言われたら、誰だってきっと嬉しい。私も嬉しい。だけど素直に喜べない。。。
「ちょっとお手洗いいくわ」そう言って麻帆は席を立ちお手洗いへ向かう。鏡に写る自分の顔をみて、化粧直しをする。17年間、彼氏なし、告白もしたこともされたこともない。男性と2人きりで話したことすらなかった。
ダメ!ダメダメ、私は明日日本をたつ。けどもっと褒めてほしい。今まで放たれることのなかった、感情が湧き上がる。
気を取り直し、テーブルに戻る。またタバコに火をつけている。
「あんたねぇいい加減にしなさい」
「麻帆は彼氏いるの?」
このタイミングでくる?説教始めたこのタイミング?空気読めないのこのバカイケメン。