もう病院食だけでは満足できなかった。売店でス
ナック菓子などのお菓子と飲み物を購入。病室
で、食べ続けた。
「莉瑠さん、カウンセリングの時間ですよ」美咲
が莉瑠の病室のドアをノックして入ってきた。莉
瑠は、虚ろな目でスナック菓子を食べ続けてい
る。「莉瑠さん、もしかして幻聴がつらいの?幻
聴とお話するのも疲れちゃったのかな?」美咲が
莉瑠に優しく話しかける。莉瑠は、耳をふさぎ頷
いた。(ああ、もうどうでもいい、食べ続けてい
たい)こんなことでしか気持ちを表現できず、幻
聴との会話や過食。「うるさい、黙れ」いつもい
つも莉瑠を馬鹿にしてくる幻聴にたいして莉瑠は
言った。
「莉瑠さん、もうわたしとお話しましょう」美咲
は莉瑠をそっと抱きしめた。「わたし、わたし
は……」莉瑠はもう美咲と話そうとしたが声が続
かない。いつしかあらわれた幻聴と話す以外、莉
瑠には感情を発散する言葉がなかった。子供の頃
は場面緘黙症で、大人になるにつれて莉瑠を馬鹿
にする幻聴があらわれ、幻聴の言うことに耐えら
れずに、幻聴にだけ言い返すようになった。「は
あ、はあ」莉瑠は子供の頃も今も、他人と自由に
話そうとすると、のどに鍵がかかったようにな
る。幻聴にたいしては、あんなに威勢良く言い返
せていたのに。「わ……たし」莉瑠は、美咲と話そ
うとするが、うまく声が出ない。(良く考えて話
すってどういうことなの?)莉瑠はいつだって心
の中で叫ぶだけだった。「馬鹿が」「お前にはなん
の価値もない」幻聴が聞こえる。「いやあああー」
幻聴の声に反応して莉瑠は叫ぶ。「先生、精神安
定剤を莉瑠さんに注射しましょうか?」その声を
聞きつけて、また看護師が莉瑠の病室に入ってき
て言った。「莉瑠さん、お願いだから落ち着いて
ちょうだい、わたしとお話しましょう」莉瑠を抱
きしめて、美咲は言う。「その女の言うことなん
か聞くな」幻聴の声に莉瑠は耳を傾ける。「いや
あああー」莉瑠は、美咲の腕を振りほどいた。
「先生、無理ですよ、注射します」看護師が言っ
て、美咲も悲しそうに頷いた。いつも通り精神安
定剤の注射を打たれ、莉瑠は眠った。
( またなんの進展もなかったのかしら?でもわた
しと話そうとしてくれたみたいだけど?彼女は一
体何を抱えているの?)美咲は莉瑠の病室を出
て、考えるのだった。
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