もう疲れ果てていた莉瑠はカウンセリングの時間
になっても起きられず、朝食後また眠り、美咲が
病室のドアをノックして入ってくるまで、目を覚
まさなかった。「莉瑠さん、お休みのところごめ
んなさいね、今日はお話できそう?」美咲が聞い
てくれた。「はい……」莉瑠は初めて美咲にたいし
て返事をした。「ありがとう、なんでも好きなこ
とを話してね」美咲は、莉瑠の言葉が本当に嬉し
かった。莉瑠はベッドの上で上半身を起こした。
「いつからこんなわたしになっちゃったのでしょ
う?わたしは子供の頃場面緘黙症で学校では言葉
が話せなかった、でも頭の中では夢ばかり見てい
たんです、あの頃はそのおかげで言葉に苦しむこ
ともなかった、言葉がなくても心があってわたは
幸せでした、悩みというものを知らず、両親はわ
たしをいろいろなところへ連れて行ってくれまし
た、わたしは戻りたい、あの頃に戻りたいです、
言葉なんかなくても心で理解していたあの頃に」
莉瑠はこれだけのことを一気に話した。「言葉で
なく心で生きていた時代のほうが莉瑠さんは幸せ
だったのね……」美咲は、莉瑠の言葉をさえぎら
ずに聞いていたが、言った。「なぜ心の力にここ
まで守られて子供時代幸せだったのかわかりませ
ん、だんだん頭の中が言葉だけになって、心によ
って深く考えずにすんで、わたしを守ってくれた
力だった、何度も戻りたいと思ってももうどんど
ん強迫観念のような思考や幻聴が聞こえるように
なってしまって、なぜなのかわからない」莉瑠は
話し続けた。頭の中の強迫観念のような思聴に邪
魔されないために。「その原因ははっきりわから
ないのだけれど、幻聴を薬で抑えることはできる
わ、だけど、完全じゃないの、だからお話をする
ことも大切な治療なのよ、話してくれてありがと
う」美咲は、安心した。薬とカウンセリングの相
乗効果で幻聴を抑えられるかも知れない。
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